II-P-41
単心室循環における肺体血流と動脈血酸素ならびに全身への酸素運搬の関係.低酸素濃度ガス吸入療法のシミュレーション
福井県立大学看護福祉学部1),福井大学医学部小児科2),福井循環器病院小児科3),国立循環器病センター小児循環器診療部4),北野病院循環器センター5),えちごクリニック6)
齋藤正一1),田村知史2),西田公一3),黒嵜健一4),吉敷香菜子4),平田哲也4),渡辺 健5),越後茂之6)

【目的】肺血流増加型の単心室循環症例における肺体血流比(Qp/Qs)と酸素供給との関係を明らかにし,低濃度酸素ガス吸入療法に関する理論的根拠を提供する.【方法】左心低形成症候群等の患者に対する低濃度酸素吸入療法のシミュレーションを行った.単心室型循環で肺体血流比(Qp/Qs)が増減するとき,血中酸素量と全身への酸素運搬がいかに変動するかをFickの原理により算出する.計算には肺循環血流量(Qp),体循環血流量(Qs),心拍出量(CO)の三者間の束縛条件が必要であるが,われわれは「心室の仕事量を一定」とみなすと臨床経験によく符合すると考えている.ただし,過去の議論はすべて「酸素消費は変化しない」という前提にもとづいており,その当否には疑義が出されていた.そこで今回,分時酸素消費量(VO2)の増加は動脈血酸素飽和度(SaO2)と酸素運搬量(DO2)とにどのような影響を及ぼすかを検討した.【結果】(1)動脈血酸素飽和度[SaO2-Qp/Qs関係]へのVO2増加の影響: 当然,SaO2は低下し,VO2が 2 倍になるとQp/Qs = 1 での飽和度が30%程度低下する.VO2とCOとは動脈血酸素飽和度に逆比例的に作用し,VO2とCOの増加率が等しいときにはSaO2-Qp/Qs関係は変化しない.(2)酸素運搬量[DO2-Qp/Qs関係]へのVO2増加の影響: DO2も同様に減少するが,相対的に僅かなCOの増加があれば代償され,VO2が 2 倍に増加してもCOが20%程度増加するだけで酸素運搬量は維持される.その効果はQp/Qs > 1 のとき,より著明である.(3)CO一定,Qs一定,心仕事量一定のいずれの束縛条件下でも上記の関係は基本的に変わらない.【結論】全身の酸素消費量増加は動脈血酸素飽和度の低下と酸素運搬量の減少を招くが,とりわけ後者は心拍出量が増加すれば代償される.

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