II-P-42
組織ドプラ法を用いた先天性心疾患症例における右室拡張機能評価の有用性に関する検討
徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部小児医学分野
井上美紀,早渕康信,阪田美穂,渡辺典子,香美祥二

【背景】左室拡張能評価での組織ドプラ法(TDI)の有用性は報告されているが,右心不全を有する先天性心疾患症例での右室拡張能評価に対する有用性の報告はない.また,先天性心疾患では短絡血流がある症例もあり,評価を困難にすると考えられる.【目的】TDIを用いた右室拡張能評価の有用性を検討する.また,心房中隔欠損(ASD)を有する右室への前負荷増加群においても,評価が可能か否かを検討する.【方法】右室負荷を有する術前および術後先天性心疾患症例を対象とした(n = 130;5.4 ± 6.1歳).さらに,ASDを有する(A群)21例,有さない(B群)109例に分類し,短絡の有無の影響も検討した.計測項目は,左室(LV)側と右室(RV)側,おのおのにおけるE,A,E’,A’,E/E’,E’/A’等である.【結果】E’(RV)とE’(LV),A’(RV)とA’(LV)の間には相関が認められたが(R2 = 0.12, 0.23),E(RV)とE(LV),E/E’(RV)とE/E’(LV)の間には認めなかった.右房圧(RAp)はE/E’(RV)と相関を認めた(R2 = 0.16).BNPはE’(RV), E/E’(RV)と相関していたが(R2 = 0.12,0.15),E’(LV),E/E’(LV)との相関はなく,右室拡張能低下がBNP上昇に関与していると考えられた.有意相関のあったRAp-E/E’(RV),BNP-E’(RV),BNP-E/E’(RV)の関係はA群,B群ともに類似した回帰直線を示し,これらの指標は前負荷の影響が少ないと考えられた.【結語】右室負荷に伴う拡張期右室壁運動異常は,左室拡張能低下を惹起している可能性が示唆された.BNP上昇は右室拡張能低下が関与しており,左室拡張能の影響は少なかった.E/E’(RV)は右室拡張能評価に適し,これは心房間交通の有無にかかわらず有用であると考えられた.

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