II-P-43
心臓MRIによる心機能評価は先天性心疾患に応用できるのか?—心臓カテーテル検査法との対比—
福岡市立こども病院循環器科1),新生児循環器科2),心臓血管外科3)
石川友一1),石川司朗1),中村 真1),牛ノ濱大也1),佐川浩一1),総崎直樹2),角 秀秋3)

【背景と目的】心臓MRIは成人領域では正確な心機能解析法と認識されているが,先天性心疾患(CHD)への応用は欧米ほど普及していない.CHDはさまざまな形態異常を有し画一評価が難しいこともあるが,流量/容量評価には有用と思われるため,心カテ被験者を対象にカテ前日に心臓MRIを行い,得られた指標を比較し,心臓MRIの効果的な使用法を考案した.【方法】MRIはSiemens社MAGNETOM Avanto(1.5T)を使用した.Steady-state法で撮像した左室短軸像連続 8~16断面の動画から拡張/収縮末期の両心室容量を計測し,phase contrast法にて大動脈弁(AV)/肺動脈弁(PV)の血流量を計測した(ARGUS. 同社).心カテ容量解析は,左室にarea-length法を,右室にSimpson法を用いた.【対象】鎮静なくMRIが可能なCHD 6 例(14.7 ± 5.6歳;術後 5-DORV 2,TGA 1,CoA complex 1, DILV 1,術前 1-MR 1).【結果】MRIによるAV流量(QsM)とFick法による体血流量(QsF)は,QsM = 0.9993 QsF(r2 = 0.36, n = 6)と近似され,重度AS例を除くと,QsM = 0.972 QsF(r2 = 0.95,n = 5)でほぼ一致した.MRIのPV流量(QpM)とFick法の肺血流量(QpF)は,QpM = 0.998 QpF(r2 = 0.32, n = 5)と近似された.MRI/心カテ容量解析で求めた各心室拡張末期容積(LVEDVm,RVEDVm,LVEDVc,RVEDVc)はLVEDVc = 0.8026 LVEDV + 23.4(r2 = 0.95,n = 6), RVEDVc = 0.2666 RVEDVm + 77.4 (r2 = 0.31,n = 5)と左室容量で強力に相関した.MRIの容積変化から求めた一回拍出量(SVLV,SVRV)と流量測定で求めた半月弁通過流量(AF,PF)を比較するとAF = 0.811 SVLV(r2 = 0.89,n = 6),PF = 0.932 SVRV(r2 = 0.85,n = 5)と高く相関しMRI検査での整合性が示された.【考案】心臓MRIは,心カテ法のような圧評価はできないが,CHD患者の血流量と心容積の算出においては酷似した値を提供し,身体的侵襲が小さく,反復もしやすい.また,UCGに比して簡便性に劣るもののecho windowが得られない症例にも可能となる.あらたな心機能評価として期待される.

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