II-P-44
大動脈縮窄症におけるstent留置の血管壁硬度への影響
埼玉医科大学国際医療センター小児心臓科
中川 良,先崎秀明,岩本洋一,小林俊樹,石戸博隆,葭葉茂樹,竹田津未生,増谷 聡,関  満

【背景】Stent留置術は大動脈縮窄症(COA)における有効な治療戦略の一つであるが,stentという非弾性物が血管に留置された場合の血管壁硬度の増加が危惧される.今回われわれは,COA患者に留置されたstent部の血管硬度を計測し,stent留置術の妥当性につき検討した.【方法】心臓カテーテル検査中に,stent留置術を施行したCOA患者 4 例において,大動脈のinput impedance,脈波伝播速度(PWV)を計測した.【結果】大動脈近位部の壁硬度(特性抵抗,PWV)はstent留置によるCOA部圧差改善に伴い全例有意に低下したが,対照群としての小短絡VSDの患者に比しなおも高値を示した.引き抜き圧曲線におけるstent部位のPWVは,下行大動脈に比して有意に高値を示したが(1,653 dynesec vs. 982 dynesec, p < 0.05),stentより近位部の上大動脈のPWVとは有意差を認めなかった(1,653 dynesec vs. 1,582 dynesec).【考察】COA患者においてはpre COAの上大動脈壁硬度が上昇しているために,stent留置によっても明らかな壁硬度の上昇は認められなかった.しかしながら,COA解除の後にpre COA上大動脈壁硬度が改善を呈する可能性も考えられるため,遠隔期におけるstent留置部を含めた壁硬度の変化を今後も検討する必要があると思われた.

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