II-P-45
小児心疾患における右心房収縮性—ventricular-atrial interaction—
埼玉医科大学国際医療センター小児心臓科
増谷 聡,先崎秀明,岩本洋一,小林俊樹,石戸博隆,葭葉茂樹,竹田津未生,中川 良,関  満

【背景】小児心疾患においては右心系の異常を来す病態が多く存在する.その際,右心房機能が病態に応じどのような挙動を示しているかの詳細は不明なままである.今回われわれは,右心房圧断面積関係を用いて右心系疾患における心房機能について検討した.【方法】右心系疾患としてFallot術後患者 4 例(PS,PR残存),完全大血管転位Jatene術後(PS残存) 5 例,および対照群として川崎病患者 3 例において心臓カテーテル検査時に右心房圧断面積関係を構築した.心房圧は下大静脈閉塞用バルーンカテーテル内腔を通して挿入した高精度圧測定ガイドワイヤーを用いて測定し,超音波四腔断面でのAQ法で計測した随時右心房断面積とから,定常状態および下大静脈閉塞中の連続的右心房圧断面積関係を構築した.これらはドブタミン負荷後にも構築し変化を比較した.【結果】下大静脈閉塞中の収縮末期圧断面積関係の傾き(Ees)は,右室収縮期圧,拡張期圧上昇に伴い上昇し(r = 0.43,r = 0.39,p < 0.05),対照群に比し有意に高い値を示した.ドブタミン負荷に対する反応も対照群より大きかった(p < 0.05).一方,右室の拡張が強く,BNPも高値で心不全を呈するものではEDPの上昇に対するEesの値は低値を示し,後負荷とのミスマッチを呈していた.さらに,ドブタミン負荷の反応性も減弱していた.【考察】心房収縮は,後負荷としての右室拡張期stiffnessの上昇に呼応して上昇し,心室との統合関係が維持されるよう適応機序が作動しているが,心不全においてはこの統合関係が破綻していることが示唆され,心房機能の維持も重要な治療戦略に組み込んでいく必要性を示唆した.

閉じる