II-P-46
小児心疾患における弛緩特性は非侵襲的に評価可能か?
埼玉医科大学国際医療センター小児心臓科
増谷 聡,先崎秀明,玉井明子,関  満,葭葉茂樹,石戸博隆,竹田津未生,小林俊樹

【背景】心不全の病態生理において,拡張能の重要性は論を待たない.早期拡張能の指標,左室弛緩の時定数は,超音波組織ドプラにおける拡張早期最大僧帽弁輪速度(e’)と良好に相関することが,動物実験や成人で確かめられている.この関係が先天性心疾患患児において確かめられれば,反復施行が容易な,小児心疾患における非侵襲的な拡張能評価法のvalidationとして意義深いと考えられ,これを検証する.【方法】当科にて心臓カテーテル検査を施行した各種先天性心疾患の患児25名.左室圧は高精度圧ワイヤーを用いて記録し,左室圧下降脚を指数関数で近似し,時定数を求めた.同時に心臓超音波Phillips 7500を用いて,組織ドプラ法により僧帽弁輪部速度を求めた.計測はコントロールとドブタミン負荷時に行い,時定数とe’の関係を比較検討した.【結果】ドブタミン負荷により左室時定数は短縮し,e’は増大した.コントロールおよびドブタミン負荷における,左室時定数とe’は良好な負の相関関係を示し(R = 0.85,p < 0.005),時定数が大きいほど,すなわち弛緩が障害されるほど,拡張早期最大僧帽弁輪速度(e’)が小さくなる関係が,小児心疾患においても精度よく成立した.【考察】心不全においてはじめに障害されることの多い弛緩特性の異常を非侵襲的に評価できれば,きめ細かな経過観察や神経液性因子の評価・介入を通じ,心不全伸展予防にもつながる可能性がある.今後,経時的評価におけるデータを蓄積し,治療効果や予後との関連についても評価を加えたい.

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