II-P-52
成人動脈管開存に対するコイル塞栓術
久留米大学医学部小児科1),久留米大学循環器病研究所2),聖マリア病院小児循環器科3),岡山大学病院循環器疾患集中治療部4)
須田憲治1,2),寺町陽三1),岸本慎太郎1),伊藤晋一3),籠手田雄介1),西野 裕1,3),家村素史1),赤木禎治4),棚成嘉文3),工藤嘉公1),松石豊次郎1)

【背景】成人の動脈管開存症(PDA)は外科的な開胸手術が行われることが多かったが,石灰化したPDAでは破裂の危険性を有し,出血や反回神経麻痺などの合併症も少なからず認める.近年,これに替わりより低侵襲で施行ができる経皮的PDAコイル塞栓術が試みられるようになってきた.【目的】成人PDAコイル塞栓術の有効性,安全性について検討する.【対象および方法】当院にて1997年~2008年12月に行った,20歳以上の経皮的PDAコイル塞栓術を行った22人を対象とした.外来カルテ,入院カルテ,カテーテルレコードをもとに年齢,性別,NYHA分類,動脈管最小径,Qp/Qs,肺動脈平均圧,コイル数・種類,前後のLVDd,カテ後合併症について検討した.【結果】年齢は平均52 ± 19歳(21~82),性別は男性 2 人で女性20人,カテ前のNYHA分類は 1 度:15人,2 度:7 人,動脈管最小径の平均は3.3 ± 1.1mm,肺動脈平均圧の平均は19 ± 7mmHg(肺高血圧例 2 例),Qp/Qsの平均は1.7 ± 0.6であった.コイルはJacksonあるいはFlipper systemの0.038”コイルを主体にしたが,7 人(32%)では0.052”のステンレスコイルを使用した.コイルの使用数は平均2.5 ± 1.4(1~5)個,治療前の心臓エコーLVDdの平均は54 ± 7mm,治療後では50 ± 6mmに低下した(p < 0.005).カテーテル治療後に合併症を認めた症例は 6 例(27%)で,内服薬による治療を必要とする高血圧を 4 例(18%),溶血性貧血を 1 例,たこつぼ心筋症を 1 例に認めた.この期間にカテーテル治療を試行し,塞栓できず手術を行った例はなかった.【考察】成人のPDAに対して経皮的コイル塞栓術は,対象を選べば有効で安全な治療法の一つと考えた.

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