II-P-54
肺静脈狭窄に対する手術およびカテーテル治療の有効性の検討
千葉県こども病院循環器科1),心臓血管外科2),集中治療科3)
中島弘道1),脇口定衞1),江畑亮太1),建部俊介1),青墳裕之1),中村祐希2),山本 昇2),青木 満2),藤原 直2),杉村洋子3)

【目的】肺静脈狭窄(PVO)の治療はいまだに困難であり,その予後も不良であることが多い.そこで当院における肺静脈狭窄の治療経過を比較し有効性を検討する.【対象と方法】対象は当院にて治療を施行した肺静脈狭窄患者17人であり,手術およびカテーテル治療を合計48回施行した.疾患は孤立性TAPVR術後狭窄10例.Aspleniaなどに合併するTAPVR術後狭窄が 5 例.その他 2 例であった.治療は手術治療(ope群)が17回(うちsutureless 9 回),カテーテル治療(カテ群)が31回(バルーン拡大(BAP)27回,stent 4 回)であった.これらの治療の有効期間を検討した.それぞれの治療から治療効果消失までの日数を有効期間とした.治療効果消失とは,当該血管の閉塞,当該血管に対する再治療の施行,または患者の死亡とした.ステント狭窄に対する拡大術は効果消失には含めたが,治療には含めず検討しなかった.Kaplan-Meier法により有効期間を比較した.【結果】(1)治療施行時の平均年齢は,2.1歳.17人中死亡は 6 人であった.(2)1 年以上再治療不要であったのは,ope 3 回,BAP 3 回,ステント 1 回であった.(3)全体での有効期間の中央値は79日であった.Ope群とカテ群ではそれぞれ93日,73日であり有意差はなかった.カテ群の中ではBAPが65日,stentが179日であり,有意差はなかったがstent群のほうが長い傾向であった.またope群でもnon-sutureless 93日,sutureless 140日であり,suturelessのほうが長期間だが有意差はみられなかった.(4)初回狭窄と再狭窄との比較では初回99日,再狭窄73日であり有意差はなかった.【結論】PVOに対する治療は困難であり,手術,カテーテル治療ともに結果は満足できるものではない.またBAPはもっとも成績が悪く,一般的には短期的な効果しか望めない.症例数が少なく有意差はなかったが,ステント治療が,治療効果の継続性から有利であり今後はより積極的に施行する価値があると思われた.

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