II-P-55
気管気管支軟化症に対する気管コーティングステントの開発
長野県立こども病院新生児科1),循環器科2),病理科3),松戸市立病院新生児科4),神奈川県立こども医療センター5)
内藤幸恵1),松井彦郎2),廣間武彦1),小木曾嘉文3),長谷川久弥4),星野陸男5)

【背景】気管気管支軟化症は先天性心疾患にとって重大な合併症の一つであるが,治療戦略は確立されていない.うちステント留置術は金属に対する局所肉芽増殖反応により,留置後に重症気道狭窄になる可能性があり,治療手段としては問題を残している.【目的】気管内肉芽反応を最小限に抑えた気管ステントを開発し,力学的耐久性および動物生体反応を評価する.【方法】ステンレスをlaserカットした金属ステントに,厚さ100μmのpolyurethane(Tecoflex)によるコーティングを行い,以下の実験を行った.【力学試験】圧縮試験機を使用して拡張保持能力を力学的に測定し,Palmaz stent(J&J Inc.)およびLuminexx stent(Medicon Inc.)と比較した.試作品の拡張保持力はPalmaz stentと同程度,Luminexx stentの約 4 倍であった.【動物実験】日本成熟家兎(体重2.5~3.0kg)10羽に気管内挿管下で気管中央部に長さ 1cmのステントを留置した(5 羽にcoated stent,5 羽にnon-coated stent).21日間の観察期間後,絶命後に気管を摘出し,気管およびステントの幾何学的および病理学的観察を行った.全ウサギとも急性期に問題なく,観察期間終了時の呼吸状態は正常であった.CTによる評価では,ステントはひずみなく,明らかな気管内狭窄は認めなかった.気管ファイバースコープではnon-coated stentの両端に肉芽反応と思われる小隆起形成が多くみられたが,coated stentに明らかな隆起形成は認められなかった.組織学的にはpolyurethane層の構造破壊なく,明らかな炎症反応もみられなかった.【考察】気管内コーティングステントは力学的に気道虚脱に対する内腔保持能力を備えていると考えられた.強度の肉芽増殖反応がないことから,繊毛上皮による気道粘膜形成の可能性が期待できた.【結語】気管コーティングステントは気管気管支軟化症治療に応用できる可能性があることが示唆された.

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