II-P-56
動脈管開存が左室心筋に与える影響 第 3 報—治療による効果—
立川病院小児科1),ハートセービングプロジェクト2)
堀口泰典1,2),富田 英2),羽根田紀幸2),野木俊二2),檜垣高史2),田村真通2),上田秀明2),片岡功一2),岸田憲二2),小西央夫2),松岡 孝2)

【背景】動脈管開存(PDA)による左室容量負荷が大きいほど心筋重量あたりの冠血流量が減少し心筋障害を生じる可能性があることを昨年の本学会で報告した.【目的】今回例数を増し,コイル閉鎖術前後における冠血流の変化を検討した.【対象】コイル閉鎖術を行ったPDA患者20例(男児 7 例,女児13例.年齢:1 歳 2 カ月~16歳 1 カ月(中央値 4 歳 7 カ月)).【方法】治療前後に心エコー図検査(装置:GE横河メディカル社製Vivid-i)を実施し,心拍数(HR),左冠動脈前下行枝最大血流速度(LAD;MAX),心係数(CI),左室拡張末期容積(LVEDV),左室駆出率(LVEF),左室心筋重量(MAS)を計測,比較検討した.また,身長体重からBSA,LVEDVとLVMASの予測値を算出しそれぞれ%normal値を求めた.【結果】PDAの最小径はø0.99~5.62(2.88 ± 1.25)mmであった.治療前後でLVEDV77.88 ± 51.30→55.91 ± 26.57(p < 0.03),LVEDV% of normal 145.97 ± 68.02→109.22 ± 39.35(p = 0.01),LVMAS 75.96 ± 48.38,LVMAS% of normal 110.93 ± 43.18,LAD最大血流速度(MAX)35.25 ± 12.76→26.85 ± 9.61cm/sec(p < 0.01)と減少した.MAS補正したLAD最大血流速度(MAX補正)は0.67 ± 0.54→0.53 ± 0.38cm/sec/g(ns)と有意の変化はなかった.一方,治療前LVEDV% of normal(x)とMAX補正の治療による変化率(y)の間にはy = 0.0019 x +0.6034という正相関がみられた.【考案と結語】PDAの閉鎖は単位心筋重量あたりの冠血流増加に寄与することがある.この増加率は治療前の左室容量負荷と正相関する.

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