II-P-58
大動脈弁狭窄症へのballoon aortic valvuloplastyの検討—有効性とその限界—
九州厚生年金病院小児科1),心臓血管外科2)
大野拓郎1),弓削哲二1),倉岡彩子1),原 卓也1),熊本 崇1),上田 誠1),渡辺まみ江1),落合由恵2),井本 浩2),瀬瀬 顯2),城尾邦隆1)

【背景】大動脈弁狭窄症(AS)に対するballoon aortic valvuloplasty(BAV)はその低侵襲性からcritical ASを含む症例に対し広く普及してきた.当院も1993年以降原則的にBAVをASに対する第一選択治療としてきた.しかし,致命的な術後大動脈弁閉鎖不全(AR)合併のリスクや長期遠隔期成績が完全に明らかにされていない等の問題もある.【目的】ASに対するBAVの意義を有効性と遠隔期成績の検討から明らかにする.【対象および方法】1993年 1 月~2008年12月に初回治療としてBAVを行った20例[A群(生後 1 カ月未満) 8 例: 実施時日齢 5(0~30), 体重2.9(2.1~3.5)kg, 経過観察期間45(5~170)カ月,B群(生後 1 カ月以降)12例: 実施時月齢 8(1~194), 体重5.7(3.6~52.0)kg, 経過観察期間126.5(8~189)カ月]を対象とし,(1)BAV前/後/遠隔期圧較差(PG)およびAR推移,(2)臨床経過および予後について検討した.なお,BAVには94.9 ± 9.5%AVA sizeのバルーンが使用され,PGが50%以上低下かつ50mmHg未満に低下した場合を有効とした.【結果】(1)PG:前53.2 ± 15.4→後21.3 ± 13.7mmHgと軽減し20例中17例(85%)に有効であった.無効であった 3 例には後日2nd BAVが実施され全例有効であった.その後遠隔期には43 ± 17.2mmHgとPGは上昇し,6 例(30%)はPG 50mmHg以上を示した.AR:急性ARによる心不全悪化例はなかったが,6 例(30%)が遠隔期に 3 度以上の高度ARに進行した.最終的にAS-PG 50mmHg未満かつAR 2 度以下の条件を満たす症例は 4 例(20%)であった.(2)5 例(25%)に残存AS(2 例)と高度AR(3 名)のためBAV後中央値71(60~168)カ月で開心術(Ross 4 例, AVR 1 例)が実施され術後経過は順調である.死亡例はB群に 2 例存在し,不整脈(VT)と心不全(EFE)のためそれぞれ10カ月・8 カ月後に死亡している.BAV関連死亡は認められなかった.【結論】根治的要素として不十分であるがcritical ASを含むASに対する初回BAV治療短期~遠隔期成績はほぼ満足のいくものと考えられる.

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