II-P-59
カテーテル治療か手術か?—純型肺動脈閉鎖—
埼玉県立小児医療センター循環器科1),東京慈恵会医科大学小児科2)
星野健司1),小川 潔1),菱谷 隆1),菅本健司1),河内貞貴1),伊藤怜司1),井田博幸2)

【はじめに】純型肺動脈閉鎖(PPA)に対する経皮的肺動脈弁形成術(PTPV)は患児への侵襲は少ないが,高度の技術を要し重篤な合併症を生じる場合がある.一方外科治療は,侵襲は大きいが,治療成績は安定している.【対象・方法】1998年 1 月以後にPTPVの適応となったPPAの患児20例を対象にPTPVの成績を検討し,手術成績と比較して治療戦略を検討した.またJPICの報告より日本におけるPTPVの成績を検討した.【結果】PTPVが成功したのは17例,不成功であったのは 3 例であった.不成功の原因は,技術の未熟性が 2 例(初期の 3 例中 2 例),技術上の限界と考えられるのが 1 例であった.PTPVにおける合併症は,手技翌日に後腹膜腔への出血での死亡(圧モニターのため留置した 3F大腿動脈のシース抜去時)が 1 例,不整脈による手技中止が 1 例,代謝性acidosisに伴う精神運動発達遅延が 1 例,であった.一方,同時期の手術症例で,大きな合併症はなかった.過去のJPICの報告からは,PTPVの成功率は50~85%,重篤な合併症は死亡例・右室流出路の穿孔などが少なからず報告されている.過去のわれわれの成績より,T弁・右室の小ささはPTPVのriskとはならず,ガイドワイヤーによる流出路の穿孔など多くの合併症は,技術の熟練で回避可能と考えられた.また以前のJPICでの検討より,手技時間が 3 時間を超える場合・透視時間が 1 時間を超える場合は,安全確保の面からも手技断念検討の目安と考えられた(現在の当センターの技術レベルでの検討).【まとめ】PTPVは治療成績に差があり,安易にPTPVを選択すべきではない.施設ごとに手術・PTPVの成績により治療戦略をたてるべきである.PTPVを施行する場合は,肺動脈弁の穿孔が困難などPTPVが不可能な症例があることを認識し,安全確保のための基準を設けておくことが重要である.

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