II-P-67
PediasatTMの使用経験
東京女子医科大学病院麻酔科
富田優子,清野雄介,黒川 智,野村 実,尾崎 真

【背景】上大静脈血酸素飽和度(ScvO2)はシャントの影響を受けないため,先天性心疾患患者手術において心拍出量(CO)のよい指標であるといわれてきたが,術中のScvO2とCOとの関係を調べた報告はない.われわれは手術中持続的にScvO2とCOをモニタリングし,ScvO2がCOの指標となり得るか調べた.【方法】修正大血管転位症,心室中隔欠損症に対し,両方向性グレン手術を受けた既往のある 6 歳女児の人工心肺下でのフォンタン手術において,右内頸静脈より PediaSatTM(Edwards Lifesciences)を挿入しScvO2を測定した.また,右大腿動脈よりPiCCOTM(PULSION medical systems)カテーテルを挿入しCOを測定し,ScvO2とCOの間に相関関係があるか調べた.統計学的検討はピアソンの相関係数を使用し,p < 0.05を統計学的に有意差ありとした.【結果】人工心肺前(データポイント数86)のScvO2は67.9 ± 4.7%,CO 2.5 ± 0.28l/minであり,人工心肺後(データポイント数28)のScvO2は81.4 ± 2.0%,CO 1.6 ± 0.056l/minであった.人工心肺の前後ともにScvO2とCOの間に有意な相関関係を認めた(人工心肺前r = 0.84, p < 0.0001,人工心肺後r = 0.65, p = 0.0002).人工心肺前のヘマトクリット(Ht) 47%,SpO2 87%,人工心肺後のHt 42%,SpO2 99%でありこれらの値に大きな変動は認めなかった.【結論】人工心肺の前後ともにScvO2とCOはよく相関する.人工心肺前は人工心肺後に比べCOは高いがScvO2は低い.これはScvO2がSpO2に影響を受けたためと考えられる.Ht,SpO2に大きな変動がなければ,ScvO2はCOの指標となり得る.

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