II-P-71
開心術後腎機能障害に対する治療—腹膜透析(PD)と持続血液濾過透析(CHDF)の比較—
弘前大学医学部胸部心臓血管外科
鈴木保之,大徳和之,山内早苗,福井康三,福田幾夫

心臓手術後の腎機能障害に対して,小児では腹膜透析(PD)を使用することが一般的だが,CHDFも小型化し小児で使用可能となってきた.当院では症例によりCHDFを使用してきたが,今回同時期に行ったPDと比較検討し報告する.【対象と方法】2002年 4 月~2008年12月に開心術後腎機能障害に対してPD,CHDFにより治療した13例(男:5,女:8),年齢:生後 1 日~ 9 歳 2 カ月(中央値 4 カ月),体重:2.0~22.4kg(中央値 3kg).13例中,PD使用 7 例,CHDF使用 3 例,CHDFからPDに移行 2 例,PDからCHDFに移行 1 例であった.CHDFのうち 3 例は補助循環(ECMO)とともに行った.CHDFの抗凝固療法はACTが200~250秒になるように,ヘパリンおよびフサンを使用した.これらの症例で透析離脱の有無,透析中の除水量,血中のクレアチニン値(Cr),血小板輸血量,合併症について比較した.【結果】補助循環を離脱できなかった例と経過中IVHカテーテル感染症から敗血症となり失った 2 例が透析の離脱不能例であった.残り11例全例,腎機能は正常に回復した.CHDF,PDの持続時間はCHDF:229 ± 256, PD:121 ± 77時間,除水量はCHDF:3.6 ± 1.2 vs PD:1.8 ± 1.0ml/kg/hr(p < 0.05),CrはCHDF:2.4 ± 1.7から0.54 ± 0.2mg/dlと低下したのに対し,PD:0.9 ± 0.1から2.1 ± 1.7mg/dlと上昇傾向を示した.血小板輸血量はCHDF:0.72 ± 0.68 vs PD:0.68 ± 0.64ml/kg/hrで有意差を認めなかった.合併症はCHDF:回路交換時に低カルシウム血漿から血圧低下 1 例,PD:排液不良でCHDFに変更 1 例であった.【考察】開心術後の腎機能障害に対するCHDF,PDは良好な成績であった.PDと比較してCHDFのほうが透析の効率,除水効果が高く,抗凝固剤の綿密な調節により血小板の輸血量に差を認めなかった.体重2.0kgの症例でもCHDFによる管理が可能であり,腎機能補助手段として小児でもCHDFは有効であると考えられた.

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