II-P-73
新生児期および乳児期早期に後天性消化管狭窄を併発した先天性心疾患症例の検討
千葉県こども病院循環器科1),集中治療科2),心臓血管外科3)
江畑亮太1),中島弘道1),脇口定衞1),建部俊介1),杉村洋子2),中村祐希3),山本 昇3),青木 満3),藤原 直3),青墳裕之1)

【背景と目的】新生児期および乳児期早期の先天性心疾患患児に後天性消化管狭窄を併発することはまれであり,診断に苦慮することもある.経験した 4 症例につき,その原因と経過を検討した.【症例】4 症例の内訳は,症例 1:大血管転位症(I型),バルーン心房中隔欠損形成術後.症例 2:大動脈縮窄,兼心室中隔欠損,subclavian flap,肺動脈絞扼術後.症例 3:三尖弁閉鎖症(Ib型),体肺動脈短絡術後.症例 4:無脾症,完全型房室中隔欠損症,両大血管右室起始,肺動脈閉鎖,体肺動脈短絡術後.4 例とも発症以前にはアロプロスタジル投与歴あり.発症時の症状,検査所見は腹部X線で腸管拡張(4 例),腹満(2 例),血便(2 例),嘔吐(2 例),下痢(1 例),CRP持続高値(1 例).壊死性腸炎の既往は 1 例(症例 1)のみ.2 例は便細胞診の好酸球陽性で当初はミルクアレルギーとして加療.4 例とも消化管造影検査にて確定診断.狭窄部位は空腸 1 例,上行結腸 2 例,下行結腸 1 例.発症日齢は平均32(18~50),確定診断時の日齢は平均55(18~88),発症から確定診断までの日数は平均23日(0~55日).4 例とも腸管切除端々吻合を施行され,切除腸管組織には潰瘍形成とうっ血の所見を認め,腸管虚血が示唆された.1 例が術後軽度再狭窄を認めたが,保存的治療にて改善し,他は順調に経過した.【まとめ】(1)4 症例とも動脈管開存あるいは体肺動脈短絡を必要とし,下行大動脈拡張期血流の引き込みを伴い,腸管血流が低下しやすい血行動態だった.(2)壊死性腸炎の既往がある症例は 1 例のみだったが,病理組織では 4 症例とも腸管虚血を示唆する所見を認めた.(3)便細胞診で好酸球陽性の 2 症例は,ミルクアレルギーとの鑑別が困難だった.【結語】腸管血流の低下を来しやすい血行動態の先天性心疾患患児では,腸管虚血のリスクがあり,消化管狭窄の併発に注意を要する.

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