II-P-74
低酸素換気療法を施行した10例の経験
群馬県立小児医療センター循環器科1),群馬大学医学部小児科2),済生会前橋病院小児循環器科3),群馬県立小児医療センター心臓血管外科4)
池田健太郎1),小林 徹2),石井陽一郎1),下山伸哉3),鈴木尊裕3),藤崎正之4),宮本隆司4),小林富男1)

【背景】新生児期の高肺血流性心不全に対し低酸素換気療法が施行されているが,確立された方法はなく有用性も不明である.【対象】2004年 4 月~2008年12月の間に低酸素換気療法を施行した10例.疾患は,IAA ; 2 例,CoA + AS ; 2 例,DORV(false T-B); 2 例,TGA(1 型); 1 例,truncus(A4); 1 例.開始日齢は 2~22日,施行期間は 3~12日間(平均 7 日).【方法】酸素と窒素の混合ガスを経鼻チューブ,ヘッドボックス,nasal CPAP,人工呼吸器回路内に投与した.混合ガスのFiO2調節法は,酸素と窒素の流量は一定とし混合前の酸素濃度をブレンダーにて濃度調節することで行い,SpO2 75~85%前後になるよう管理した.【結果】ショック状態で入院した 2 例は当初から人工呼吸管理下に施行した.他の 8 例は経鼻チューブ,またはヘッドボックスにて投与を開始したが,コントロール困難であった症例はnasal CPAP下投与(3 例),人工呼吸管理下投与(3 例)に変更した.FiO2はSpO2,血圧,尿量を参考に適宜調節を行った.人工呼吸管理下では吸引や体位変換などの刺激に伴う血圧の変動が著明であったが,nasal CPAP下での投与は血圧の変動も少なく比較的安定した管理が可能であった.最低FiO2は経鼻チューブでは0.13~0.16, nasal CPAP, 人工呼吸管理下では0.15~0.16であった.全例で状態の改善が得られ定時の手術に到達した.現在まで低酸素換気療法が原因と考えられる明らかな合併症は認めていない.【結論】新生児期早期に高肺血流を来す心疾患において,低酸素換気療法により全身状態を安定させ,術前状態を良好に保つことが可能と思われた.また,nasal CPAP下での投与は比較的安定した管理が可能であった.

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