II-P-75
拡張不全における塩酸コルホルシンダロパート投与の心臓超音波検査所見の変化
埼玉医科大学国際医療センター小児心臓科
岩本洋一,先崎秀明,玉井明子,関  満,増谷 聡,葭葉茂樹,石戸博隆,竹田津未生,松永 保,小林俊樹

【背景】拡張不全においては,前負荷増大に対する拡張末期圧(EDP)の上昇が大きく水分出納に余裕がなくなる.さらに右心室圧は心室―心室関連により,左心室のEDPに対し一定の割合で影響を与えている.したがって末梢静脈を拡張させることは,心臓から末梢へのvolumeシフトと右心室圧の低下をもたらし,拡張不全の治療に合目的である.2006年の本学会において,われわれはアデニレートサイクラーゼ活性剤(塩酸コルホルシンダロパート:CDH)の有効性について報告した.今回,拡張不全を伴った症例で効果が得られた 1 患児の心臓超音波検査所見の投与前後の変化について報告する.【症例】生後 6 カ月,女児.【現病歴】日齢 5 に当院に搬送され,不完全型心内膜症欠損,大動脈縮窄と診断された.日齢 8 に大動脈再建術が行われた.5 カ月時に心内修復術が行われた.水分率が80ml/kg/日を超えると喘鳴などの呼吸器症状が出現し,また左心室は拡張末期径19mmとやや小さく,拡張不全と診断された.CDH0.01γの投与を開始し,約24時間後に0.02γに増量した.【結果】投与前後の心臓超音波検査所見ではE/e’が1.35/3.51から1.3/4.50,S’が3.8cm/sから5.2cm/sへと変化した.肺静脈のatrial reverse flowのvelocity time integralは3.97cmから3.25cmと軽度の減少が認められた.EFは軽度の改善が認められた.肝静脈血流も呼気終末心拍で計測し,forward flowが増大し,reverse flowは減少が認められた.心拍数の変化は認められなかった.尿量の増加も認められ,水分率を上昇させることが可能となった.【考察】CDHにより心不全の改善が認められた.CDHの適量は拡張不全の程度により,増量には慎重を要する.心臓超音波検査所見の変化はその効果判定に有用であると推察された.

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