II-P-76
小児心疾患手術後管理におけるシスタチンCの有用性
埼玉医科大学国際医療センター小児心臓科1),小児心臓外科2)
玉井明子1),増谷 聡1),関  満1),葭葉茂樹1),石戸博隆1),竹田津未生1),先崎秀明1),小林俊樹1),枡岡 歩2),岩崎美佳2)

【背景】小児心疾患手術後管理においては,血管内ボリュームや心機能の急激な変動に加え,時に大量の利尿剤や透析の導入も必要となることから,簡便で正確な腎機能の把握が重要と考えられる.血清クレアチニン値(Cr)は,簡便で有用な指標であるが,筋肉量や運動の影響を受けるというlimitationを有する.この欠点を持ち合わせない新しいGFRの指標,シスタチンCの有用性が成人を中心に多く報告されてきた.しかし小児心疾患手術後管理における臨床上の有用性は明らかでない.【目的】小児心疾患術後管理におけるシスタチンCの病態生理的意義を検討し,報告する.【方法】当院にて手術が施行された各種先天性心疾患患者20名(中央値0.4歳,0~7 歳).手術前と手術後 1 週間までの(採血機会のある)連日で血清シスタチンCおよびCrを測定し,体重変化や循環動態との関連を比較検討した.それぞれのデータ分布から,シスタチンCは手術前との差を,Crは手術前との変化率をとって手術前後の変化を検討した.【結果】シスタチンCは,0.72~2.11mg/lまで分布した.両指標の変化は,ゆるやかな正相関を示したが(R = 0.49),一部にはずれる症例があった.Crがほぼ変化しないにもかかわらずシスタチンCが低下した症例は,手術にて体血流量が増えたと考えられる症例群(TAPVC術後,AS術後など)であり,反対にクレアチニンの変動と比較してシスタチンCが大きく増加していた症例は,BT短絡より多量の左右短絡を来し,術後心不全管理に難渋した症例であった.【考察】今回のpreliminal studyは,シスタチンCが循環動態を加味した腎機能に関して有用な情報を提供してくれる可能性を示唆し,今後さらに症例を蓄積してシスタチンCの臨床的意義を検討していきたい.

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