II-P-78
極低出生体重児に合併した心室中隔欠損症の呼吸管理にnasal directional positive airway pressure system(N-DPAP)が有効であった 1 例
あかね会土谷総合病院小児科
本田 茜,脇 千明,田原昌博

【背景】低出生体重児・早産児の高肺血流型CHDでは,肺血管構造や心筋の未熟性のために生後早期から重篤な心不全を来すことがありその管理が重要となる.今回われわれはnasal directional positive airway pressure system(N-DPAP)使用により心不全症状軽減,体重増加が得られた症例を経験した.【症例】在胎29週 3 日,1,380gで出生した男児.前期破水後10日目に帝王切開,APs 7/9点.RDSは認めず,胎盤病理検査でblanc 2 度の絨毛羊膜炎.UCGで2.5mm大の膜様部心室中隔欠損症と診断.Indomethacin 1回投与し日齢 6 にPDA閉鎖.日齢 3 より利尿剤内服開始したが呼吸障害・心拡大(CTR 60%)認め日齢 9 よりN-DPAP開始(FiO2 0.21, flow 8l/min, PEEP 4~5cmH2O).呼吸障害が軽減し翌日のX線で肺うっ血・心拡大改善(CTR 50%).pCO2は50mmHg前後で経過.順調に体重増加がみられた.Infant flow systemTMを使用,鼻中隔圧迫防止のため創傷被覆材を貼付し挿入型とマスク型プロングを併用した.使用期間中,重度腹部膨満等の合併症なし.生後 3 週頃より心室中隔欠損孔は縮小傾向となり日齢29 N-DPAP中止,日齢42利尿剤投与中止,日齢45に自然閉鎖を確認.軽度慢性肺疾患を認めたのみで,日齢59(修正37週 6 日)2,520gで退院.修正37週の頭部MRIで異常なし.【考察】N-DPAPは肺胞虚脱の防止・機能的残気量増加・呼吸仕事量減少・肺への圧損傷軽減などの効果が期待でき,より少ない合併症で安定した呼気終末圧上昇が得られる呼吸管理法である.早産児の慢性肺疾患防止効果を期待して広く使用されているが,換気血流不均衡の是正,胸腔内圧上昇による肺血流減少などの点から高肺血流型の心疾患に対しても心不全症状や肺損傷軽減の効果が期待できる.より短絡量の多い症例に対しては挿管による人工呼吸,低酸素換気療法などが有用と考えられるが,未熟な全身臓器への影響や簡便性を考えるとN-DPAPはまず試してみる価値のある治療法と考えられた.

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