II-P-79
当院における肺血流増加型心疾患に対する窒素を用いた低酸素換気療法の効果と安全性に関する検討
熊本市立熊本市民病院小児循環器科1),小児心臓外科2)
後藤 啓1),八浪浩一1),久冨雄一朗1),中村紳二1),藤田 智2),帯刀英樹2),深江宏治2)

【目的】肺血流増加型心疾患に対する窒素ガスを用いた低酸素換気療法(N2療法)の効果と安全性を後方視的に検討する.【対象】2003年 4 月~2008年12月に当院総合周産期母子医療センターでN2療法を施行した34例.N2療法開始時受胎後週数39週(28~48週),N2療法開始時体重2,545g(660g~3,790g).心疾患は単心室型 5 例,二心室型29例(チアノーゼ型21例,非チアノーゼ型 8 例).N2療法は当院の倫理委員会の承諾を得ており,開始前に文書による両親への説明と承諾を得た.【方法】呼吸器回路の吸気側に,あるいはhead box内に窒素と空気の混合ガスを流しFiO2を0.21未満(最低0.17)に低下させた.27例は人工換気下に,7 例はhead boxで施行.吸入酸素濃度と経皮的動脈血酸素飽和度を連続的にモニターした.N2療法前後で結果に影響を与える他治療内容の変更のない 7 症例について乳酸値や尿量,血圧などを評価した.【結果】N2療法開始日齢は 1~65(中央値 7),治療期間は 1~57日(中央値8.5)であった.手術到達率は94%(21 trisomy,TAMのため術前死亡 1 例・超低出生体重児,VSD縮小化のため手術回避 1 例)であった.他治療との併用で効果判定は難しいが,無効例が 4 例(2 例は染色体異常症)あった.全例でN2療法による短期的な副作用は認めなかった.上記 7 症例では乳酸値が平均3.1から2.4mmol/lへ低下,尿量は2.8から4.0ml/kg/hrへ増加,血圧は不変であった.【結語】N2療法は肺血流増加型心疾患において手術を前に副作用なく全身状態を安定,改善させる有用な手段と思われる.しかし長期的には中枢神経系や肺動脈などに与える影響は明らかではなく症例の経過を追跡し検討していく必要がある.

閉じる