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胎児期に発症し肺循環管理に難渋したUhl病の低出生体重児例
あかね会土谷総合病院小児科1),心臓血管外科2)
田原昌博1),脇 千明1),本田 茜1),山田和紀2)

【背景】Uhl病は右室自由壁の心筋欠如を特徴とし,一方で正常な三尖弁と正常な左室心筋をもつ極めてまれな疾患である.新生児発症例から成人発症例までさまざまの年齢層があり,新生児発症例はほぼ全例乳幼児期に死亡するとされている.今回われわれは胎児期に右心系異常と胸水を指摘され,出生後の肺循環管理に難渋し,最終的に死亡した症例を経験した.胎児期発症の報告例は少なく,病態について考察を加えて報告する.【症例】日齢 0 男児.在胎34週 2 日の妊婦検診で心臓運動異常と胸水を指摘され,当院母体搬送となり,胎児エコーでUhl病,右心不全と診断後,緊急帝王切開で出生(体重1,996g).Apgar score 3 点(1 分)/ 4点(5 分).直ちに気管内挿管,両側胸腔穿刺を施行.心エコーで右房,右室の著明な拡大,右室壁菲薄化を認め,右室収縮は認めなかった.右室から肺動脈への順行性血流は確認できず,動脈管から拍動流を認め,機能的肺動脈閉鎖の状態であった.三尖弁尖の変位や冠動脈起始異常は認めず,左室運動正常であった.Lipo prostaglandin E1,nitroglycerin,カテコラミン等の投与を開始したが十分な昇圧が得られず,乏尿が続き,腹膜透析併用.肺出血出現し,日齢11に肺血流コントロール目的で動脈管結紮術,右体肺動脈短絡術(3.5mm)施行.日齢13から利尿が得られ始めたが,酸素投与量は減量できなかった.その後再び循環動態が不安定となり,日齢22死亡退院.【考察】体肺動脈短絡術後にも低酸素血症が続く一方で,高度の肺高血圧は認められなかった.シャント不全も考えたが,解剖では屈曲や閉塞を認めなかった.一方で右室心筋は全体的に白く膜状の外観を呈しており,肉柱の発達が乏しかった.右室の機能に見合った肺血管抵抗を獲得するために,術後管理に積極的な一酸化窒素などの投与を検討すべきであったと思われた.

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