II-P-81
新生児期に発症した肥大型心筋症の臨床経過
岐阜県総合医療センター小児循環器科1),小児心臓外科2)
桑原直樹1),面家健太郎1),後藤浩子1),桑原尚志1),大倉正寛2),八島正文2),竹内敬昌2)

【背景】乳児の肥大型心筋症では,Noonan症候群など基礎疾患の合併や,成人や年長例に比べ心不全や不整脈の早期顕在化が指摘されているが,新生児期に発症した肥大型心筋症の臨床経過の報告は少ない.【対象】2000~2008年に当科で経験した新生児期発症肥大型心筋症 5 例(男:3,女:2)について各症例の診断,臨床経過,治療,予後について検討した.全例生後 1 カ月以内に症状発現のため紹介となり心臓超音波検査にて肥大型心筋症と診断した.平均観察期間は35.8カ月(5~92カ月).【結果】Noonan症候群合併が 4 例.Costello症候群合併が 1 例.症状は心雑音,チアノーゼ,呼吸障害,哺乳不良,嘔吐遷延黄疸など多彩であった.先天性心疾患の合併は 3 例あり,両大血管右室起始および肺動脈狭窄が 1 例,心室中隔欠損が 2 例であった.外科手術は 3 例に施行し,体肺短絡術を 1 例,気管軟化症に対し気管切開術を 2 例,胃軸捻転を合併した 1 例に開腹術を施行した.経過中右室流出路狭窄の進行を 3 例,左室流出路狭窄の進行を 3 例に認めた.不整脈の合併は 2 例であった.投薬は全例に行われβ遮断剤は 4 例,Ca拮抗剤は 3 例,シベンゾリンは 3 例に投与した.1 例が体肺短絡術後肺動脈拡大による気管狭窄のため 2 歳で死亡.1 例が在宅人工呼吸管理中であった.Costello症候群合併の 1 例は,心不全の顕在化はなく経過観察中だが,生存するNoonan症候群合併例は心不全のため投薬を継続していた.【結語】新生児期に発見された肥大型心筋症は基礎疾患および合併する先天性心疾患により多彩な臨床症状を呈する.また,Noonan症候群合併例では,先天性心疾患や流出路狭窄や拡張障害のため早期より心不全が顕在化し抗心不全療法を必要としていた.

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