II-P-100
左室縮小術術後 6 年で再増悪した心不全に対し,除細動器付両心室ペースメーカー(CRT-D)植え込みを施行し症状の改善を得た,小児期発症二次性拡張型心筋症の 1 例
京都大学医学部小児科1),循環器内科2),検査部3)
横尾憲孝1),土井 拓1),美馬隆宏1),鷄内伸二1),馬場志郎1),土井孝浩2,3),中畑龍俊1)

内科的な治療で限界に達した重症心不全に対する外科的optionとしては心臓移植術のほかに左室縮小術があり,症例を選べば良好な結果を得ることができる.一方近年,重症心不全に対する治療として心臓再同期療法が確立されてきたが,小児領域での報告はまだ少ない.当科で経験した症例につき報告する.症例は体重32kgの18歳女性.先天性僧帽弁閉鎖不全兼狭窄に対し,5 歳時に弁置換術を施行.術後経過は思わしくなく,開胸下 1 週間のIABP装着を要した.この経過で二次性拡張型心筋症の状態となり,慢性心不全として加療を続けた.11歳時,徐々に心機能が低下する経過中,パンヌスによる弁一葉開口不全を生じ,カテコラミン静注等の内科的治療にもかかわらず低心拍出性ショックを来しIABP装着.準緊急的に左室縮小術(SAVE術)と僧帽弁再置換術を施行した.術後経過は良好でNYHA II°まで回復.βブロッカー内服を追加して外来フォローとなった.比較的順調に経過していたが,術後 5 年を経過した頃より,心エコー上左室拡張末期径の再拡大傾向を認めEFは30%,100ng/ml程度を維持していたHBNP値は400台まで上昇.多少の体動で動悸や全身倦怠感を自覚するようになった.心電図上QRS幅は130msec.程度から170msec.まで延長していた.心臓再同期療法の適応ありと判定したが,心房素細動や心室頻拍を認めるようになったためアミオダロン内服を開始しており,除細動機能を持つCRT-Dの植え込みを施行した.植え込み後,平均心拍数は110から70へと著減,HBNP値は200台まで低下.全身倦怠等の自覚症状も改善し,心臓リハビリもこなせるようになった.同症例の治療方針,経過につき考察する.

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