II-P-101
乳児期に発症した僧帽弁腱索断裂の 2 例
国立成育医療センター循環器科1),佐野市民病院2)
朝海廣子1),林 泰佑1),金 基成1),金子正英1),賀藤 均1),関口昭彦2)

【背景】乳児期の僧帽弁腱索断裂は重症の急性左心不全として発症するが,まれな疾患のため呼吸器感染症として初期治療されていることがある.今回われわれは,急性呼吸不全にて発症した僧帽弁腱索断裂の乳児 2 例を経験したので報告する.【症例 1】4 カ月,男児,既往歴,家族歴に特記事項なく,心雑音を指摘されたことはない.夜間に哺乳不良を主訴に前医を受診し,肺炎の診断にて入院となった.第 2 病日に急激に呼吸不全が進行し,人工呼吸管理,集中治療を開始されたが,多臓器不全へと進行し,第 3 病日に当院転院となった.転院時,心雑音を聴取し,心エコーで高度MRとともに僧帽弁逸脱と腱索断裂を認め,同日に人工腱索を用いた僧帽弁形成術を施行した.僧帽弁の前尖,後尖ともに断裂を認めた.術後も中等度MRが残存し,徐々に心不全の増悪を認めたため第54病日に再形成術を施行した.その後の経過は良好で,術後35日に退院となった.【症例 2】6 カ月,男児,既往歴,家族歴に特記事項なく,心雑音は指摘されていない.1 週間程発熱が続いたが,解熱傾向のところ,夜間に急に多呼吸,顔色不良が出現し前医を受診した.心エコーで高度MRを指摘され当院搬送となった.来院時,多呼吸,呻吟が著明であり,心エコーではMR,僧帽弁逸脱を認め,同日緊急手術となった.僧帽弁前尖の腱索は数カ所断裂しており,後尖にも亀裂を認め,縫合困難であったため,僧帽弁置換術を施行した.摘出した弁組織の病理組織診断にてグラム陽性菌を認め感染性心内膜炎による僧帽弁腱索断裂と診断した.術後の経過は良好で第49病日に退院となった.【考察】急性心不全を呈し,緊急手術により救命しえた僧帽弁腱索断裂の乳児 2 例を経験した.生後 6 カ月未満の乳児が急性呼吸不全を発症した場合は,呼吸器疾患のみならず,本疾患の存在に留意する必要がある.

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