II-P-102
小児におけるRV pacing induced DCMに対する治療戦略—CRTからLV pacingへ変更したRV pacing induced DCM—
戸田中央総合病院小児循環器科1),埼玉医科大学国際医療センター小児心臓科2),小児心臓外科3)
松永 保1,2),関  満2),岩本洋一2),葭葉茂樹2),石戸博隆2),増谷 聡2),竹田津未生2),先崎秀明2),小林俊樹2),枡岡 歩3),加藤木利行3)

【背景】先天性房室ブロック(CHB)や術後房室ブロックに対する新生児期のペースメーカー(PM)治療では,心外膜リードが右室に埋め込まれる例も多い.しかし,心機能が低下する例も多く拡張型心筋症(DCM)の病態を呈する例もある.最近,RV pacing induced DCMに対して心臓再同期療法(CRT)が有効だという報告がみられるが,乳幼児期に心機能が低下した場合,CRT用のPMはリード 3 本と電極 6 個を必要とし,癒着剥離やリードの多さ,電極の位置,ペースメーカーの大きさや電池寿命等の問題が発生する.これらの問題に対する通常のPMを用いたわれわれの治療戦略について報告する.【症例】2 歳女児.在胎23週 2 日に徐脈を指摘されCHBと診断,36週 1 日CSで出生した.日齢28にRV前面に心外膜式ペースメーカ植え込み術(VVI)を施行された.外来で,心拡大(LVDd 42mm),UCG上左室機能低下を認め,2 歳時BNP 612.1と上昇を認めた.UCGでdyssynchronyを認め,CRTの適応と診断し,IDENTITY Adx DR(DDD)を,心外膜電極を陽極をRVに,陰極をLVに植え込みCRTを施行した.術後経過良好で,術後 5 カ月ではCTR 56%,LVDd 27mmでdyssynchronyを認めず,BNPも46.4まで下がった.しかし,右室側の閾値が高いため出力が高く,電池寿命を考え,出力を下げLV pacingとした.現在変更後 7 カ月経つが,dyssynchronyをわずかに認めるが,心拡大(LVDd 30mm),BNP 11.9と経過良好である.【考察】幼児のRV pacing induced DCMに対して,通常のPMを用い 1 本のリードの陽極と陰極を左右心室に分けて使用した.これにより,リードの本数を減らし,電池寿命を考慮して患児の状態に応じて,出力によってCRTとLV pacingを使い分けることが可能であった.

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