II-P-103
心臓再同期療法の適応における心電図基準
あいち小児保健医療総合センター循環器科
安田東始哲,福見大地,沼口 敦,足達武憲

【背景】心臓再同期療法は,重症心不全における両心室間あるいは左心室内の収縮時相のずれを最適化すること,および心房心室時間を最適化することにより,心拍出量を最大にする治療法である.適応は,成人においてQRS時間(msec)が120を超える左脚ブロック,左室駆出率35%以下,そして左室拡張を示す例とされている.【目的】小児の心不全における,心不全と心電図波形との相関を検討すること.【対象】先天性心奇形を認めない心疾患患者で,3 カ月以上の慢性心不全あるいは心エコー上左室駆出率(EF)が60%未満を呈する11例(年齢15 ± 5.3歳(平均 ± SD),男 4,女 7).基礎心疾患は,拡張型心筋症(4),左室心筋緻密化障害(3),頻拍誘発性心筋症(2),Marfan症候群(1),心筋炎後(1).【方法】対象を,外来通院しているNYHA 2以下の 6 例(M群)と,入退院を繰り返しているNYHA 3以上の 5 例(S群)の 2 群に分け,QRS時間,V1の陰性P時間(msec)(negPV1),心エコーでのEF(%), LVDd(mm),BNP(pg/ml)を比較検討した.【結果】M群:S群でそれぞれ,年齢(13 ± 6.0:17 ± 3.6),NYHA(1.5 ± 0.8,3 ± 0),QRS時間(94.2 ± 7.0,112 ± 28),negP時間(3.0 ± 6.7,50 ± 8.2),EF(60 ± 13,38 ± 14),LVDd(54 ± 15:64 ± 11),BNP(12 ± 0,480 ± 570)であった.【結論】QRS時間の増大は,心機能の指標として,必ずしも左心不全の程度と相関しない.QRS時間にV1の陰性P時間を基準に加えると,心不全の程度と相関傾向が認められる.

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