II-P-104
左右短絡疾患患者における心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)の臨床的意義の検討
埼玉医科大学国際医療センター小児心臓科
関  満,岩本洋一,葭葉茂樹,石戸博隆,増谷 聡,竹田津未生,小林俊樹,先崎秀明

【背景】心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)は主に心房で合成され,心房伸展刺激によりその分泌量は増大する.脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)は心筋の前負荷・後負荷の増大により分泌量が増加し心不全の病態の把握に重要な意義を持っており,心不全のマーカーとしてANPよりも有用であるとの報告が多い.一方で,ANPは本邦では利尿・心保護作用を期待した心不全治療薬として意味合いが強く,心不全の補助診断や心血行動態における意義に関する報告は少ない.【目的】左右短絡疾患患者におけるANP・BNPの動態を検討し,ANPの心不全との関連,心血行動態における臨床的意義を明らかにすること.【方法】2000~2007年における当科にて心臓カテーテル検査を施行した心室中隔欠損症(VSD)60例,心房中隔欠損症(ASD)52例,動脈管開存症(PDA)45例を対象とした.それぞれの疾患群において,検査時にANP,BNPを測定し,各種パラメーターとの関係を検討した.【結果】各測定値はVSD群でANP:39.0 ± 34.3pg/ml,BNP:26.5 ± 36.8pg/ml,ASD群でANP:41.0 ± 42.0pg/ml,BNP:26.4 ± 32.4pg/ml,PDA群でANP:31.4 ± 32.5pg/ml,BNP:23.9 ± 32.5pg/mlであり,各群で差は認めなかった.VSD群,PDA群においてはANP,BNPともにQp/Qsとの正の相関関係を認め,その上昇はQp/Qsの増大に従い,まずはANPが上昇し,続いてBNPが上昇する傾向を認めた.ASD群においてはいずれも相関関係を認めず,ANP,BNPの挙動に明らかな関連は認めなかった.【結語】ANPは左心系容量負荷を来す病態(VSD群,PDA群)においてBNPよりも早期に上昇する傾向を認めた.これは短絡量の増大に伴って心房の伸展刺激が先に生じ,続いて病態の進行に従い心室負荷が増大することによるものと思われた.ANPとBNPは病態により異なった挙動を示す可能性があり,ANPの情報を加えることによりさらに精度の増した病態解明ができる可能性を示唆し,さらなる検討を行いたい.

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