II-P-106
さまざまな心負荷または収縮能低下を示す児における迅速BNP値
宮崎大学医学部小児科
近藤恭平,高木純一,大塚珠美,久保尚美

【背景】BNP値はさまざまな先天性心疾患および後天性心疾患において心不全の指標として有用であると報告されている.成人と比較して,小児期においてはさまざまな病態の心不全が存在する.これまで小児においても病態ごとのBNP値と血行動態についての報告は多数存在する.しかしながら,小児期にみられる異なった病態を示す心疾患とBNP値を同時に検討した報告は少数である.【対象・方法】2006年 1 月~2008年12月に当科で診療を行った計141名.年齢は平均2.4歳(日齢 1~18.3歳).男児70名,女児71名.病態は以下の四つに分類した.介入の必要性のない心負荷群(73人),圧負荷群(8 人),容量負荷群(55人),収縮能低下群(5 人).介入の必要性のない心負荷群は以前の外科的治療歴を問わず,心負荷がないまたはあっても外科的治療を要さない軽症の容量負荷あるいは圧負荷を示す例と定義した.圧負荷群は外科的治療を要する圧負荷を示す例と定義した.容量負荷群は外科的治療を要する容量負荷を示す例と定義した.収縮能低下群は左室駆出率40%未満を示す例と定義した.複数の病態を示した例については主病態にしたがって分類した.患児の60%以上が乳児であり,微量検体で測定可能かつ瞬時に判断を要する点を考えて迅速BNP値を測定し,検討を行った.【結果】迅速BNP値は以下の通りであった.介入の必要性のない心負荷群では平均31pg/ml(3.25~207).圧負荷群では平均38pg/ml(10.6~197).容量負荷群では平均334pg/ml(7.04~ > 2,000).収縮能低下群では平均1,618pg/ml(94.6~ > 2,000).また,経過中に収縮能低下群で 4 例,容量負荷群で 3 例を失った.【考察】収縮能低下群で最も迅速BNP値の高値を認めた.また,容量負荷群でも迅速BNP値の高値を認めた.迅速BNP値の測定することは主病態,重症度,治療介入を判定するうえでも非常に有用である.

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