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小児先天性心疾患患者におけるpropeptide of type III collagen(P-III-P)の経時的変化
埼玉医科大学国際医療センター小児心臓科
玉井明子,先崎秀明,岩本洋一,小林俊樹,石戸博隆,葭葉茂樹,竹田津未生,増谷 聡,関  満

【背景】Propeptide of type III collagen(P-III-P)は,procollagen type IIIがcollagen type IIIに変換される際に血中に流出するため,血中P-III-P濃度は,組織におけるcollagen代謝を反映するといわれている.例えば,血中P-III-P濃度は,心筋梗塞後の心室リモデリングと関連し,その後の心機能のマーカーとして有用であることが知られている.われわれは,種々の先天性心疾患において,圧容量負荷,および低酸素の状態に応じ,P-III-Pが上昇していることを報告してきた.今回われわれは,それらが治療や経過に伴いどのように変化するかを検討した.【方法と結果】対象は血中P-III-Pの経時変化を記録できた41名で,心臓カテーテル検査時に下大静脈からの採血からP-III-Pを放射免疫定量法にて測定した.初回検査年齢0.2~13歳(median 1.6歳),観察期間0.2~5.6年(median 1.1年)であった.内訳は左室圧負荷(大動脈弁狭窄,大動脈縮窄)3 例,右室圧負荷(肺動脈狭窄,TOF術後,TGA術後)14例,単心室(BTS/PAB後,Glenn後,Fontan後)23例であった.左室圧負荷群は狭窄解除に伴い前例でP-III-Pが低下した.右室圧負荷群では,経過中の狭窄前後の圧較差の変化と,P-III-Pの変化は有意な正の相関を示した(狭窄増強ではP-III-Pも増加).単心室循環では,BTシャントよりGlenn術後,Glenn術後よりFontan術後のP-III-Pが有意に低値を示した(p < 0.01).【まとめ】血中P-III-Pは,先天性心疾患における圧容量負荷,および低酸素血による心室のcollagen代謝を反映し,先天性心疾患の管理に関する新たな指標を提供してくれる可能性がある.

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