II-P-108
Eisenmenger症候群における死亡例のリスク因子
東邦大学医療センター大森病院小児科
池原 聡,直井和之,嶋田博光,高月晋一,中山智孝,松裏裕行,佐地 勉

【背景】薬物治療の進歩に伴いEisenmenger症候群(ES)の予後は改善してきているが,一方では不幸な転帰をたどる症例が存在するためさらなる評価が必要である.【目的】ESの症状,検査値から死亡例のリスク因子を検討すること.【対象と方法】過去25年間に当科で経験したES22症例(男 8 例,女14例)のSpO2,NYHAクラス,胸部X線のCTR,血液検査(Hb,T-bil,AST,ALT,UA,Cr,BNP),および治療内容について後方視的に比較検討した.【結果】基礎疾患はASD 8 例,VSD 9 例,PDA 3 例,APW 1 例,l-TGA 1 例(そのうちheterotaxia 1 例,22q11.2欠失症候群 1 例)であった.生存群(S)は15例で年齢30 ± 14.9歳,死亡群(D)は 7 例で年齢24.3 ± 12. 6歳であった.SpO2,NYHAクラス,BNP,AST,ALT,UA,Crには有意差は認めなかった.CTRはD群で大きい傾向にあった(p = 0.14).また,T-Bil(p = 0.005),Hb(p = 0.04)はD群で有意に高かった.HOTがD群で 7 例中 6 例,S群で15例中13例に行われ,肺高血圧に対する治療はD群では 7 例中 4 例がベラプロスト(Bera)もしくはボセンタン(Bos)単剤投与が行われ,1 例がBera + シルデナフィル(Sil),1 例がSil + Bos + エポプロステノール(Epo)と20%に併用療法が行われていた.S群では15例中 7 例がBera,Sil,Bosいずれかの単剤投与が行われ,8 例(53.3%)にEpoを含む併用療法が行われていた.抗凝固薬はD群で 7 例中 4 例に,S群で15例中12例に投与されていた.合併症は喀血がD群で 2 例,S群で 6 例,不整脈がD群で 1 例,S群で 2 例であった.死亡の原因は 5 例が心不全増悪(2 例がVSD閉鎖術後),1 例がインフルエンザ感染症による呼吸不全,1 例が肺出血であった.【結論】検査所見からはSpO2に有意差はみられなかったがHbが高い症例,逸脱酵素の上昇を伴わないT-Bilの上昇はES症例のリスク因子と考えられた.

閉じる