II-P-109
ファロー四徴症(TOF)術後遠隔期における,アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE-I)の投与量と脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)の血中濃度の変化についての検討
北海道大学病院小児科1),自治医科大学とちぎ子ども医療センター小児科2)
古川卓朗1),山澤弘州1),八鍬 聡1),武田充人1),上野倫彦1),村上智明2)

【目的】BNP血中濃度は成人の心不全,心筋梗塞などにおいて重症度や予後の判定などに広く用いられ,近年BNPガイドの治療に関しての報告も散在する.先天性心疾患術後遠隔期においてもさまざまな理由でBNPの上昇を認めるが,内科的管理においては薬剤効果を証明するまとまった報告は少ない.われわれは成長に伴い変動する体重あたりのACE-Iの投与量(ACE-I mg/kg)とBNPの関係について,TOFの二心室修復術後遠隔期の症例を対象に後方視的に検討した.【対象】TOFの術後 1 年以上経過した例で,ACE-Iの内服を10歳以下より開始し 1 年以上継続している症例を対象とした.重篤な不整脈の既往のある症例,β受容体遮断薬,ジギタリスなどを併用している症例は除外した.【結果】症例は12例で心内修復術時の平均年齢は2.0 ± 1.4(平均 ± 標準偏差)歳,投与開始年齢は3.0 ± 1.8歳,ACE-I継続期間は6.7 ± 1.9年であった.個々の症例においてのACE-I mg/kgとBNPの有意な相関は12例中 4 例(33%)に認めた.すべての症例を統合したACE-I mg/kgと各症例のBNP最高値を100%として算出した値(%BNP)は負の相関を認めた(n = 136, 相関係数 = -0.279, p = 0.001).個々の症例での検討ではBNPが最高値・最低値の際のACE-I mg/kgを比較すると最高値の投与量が有意に少なく(p = 0.012),またACE-Iの投与量が最大・最少量の時の%BNPを比較すると投与量最大の時,有意に%BNPが低値だった(p < 0.001).【結語】TOFの術後遠隔期のBNP上昇に対しACE-Iは容量依存性にBNPを低下させる効果があることが示唆された.BNP上昇の原因はさまざまであると推測されるが,十分な投与量のACE-Iは心不全の進行を抑制する効果や不整脈などの発症を低下させる効果が期待できる可能性がある.

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