II-P-110
成人期に施行した心房中隔欠損閉鎖術後における不整脈・弁逆流の検討
名古屋第一赤十字病院心臓血管外科
河村朱美,伊藤敏明

【目的】成人期に心房中隔欠損症(ASD)の外科的治療をうけた症例の術後不整脈・弁逆流を評価した.【方法・結果】2001年12月~2008年10月の当院で外科的ASD閉鎖術を施行した患者28例を対象とした.男女比は9:19,手術時平均年齢は56.4 ± 14.0歳,術前の不整脈合併は心房細動(Af) 9 例(32.1%),junctional rhythm 1 例(3.5%)であった.術前弁逆流は三尖弁がtrivial 1 例,mild 12例,moderate 8 例,severe 3 例で,僧帽弁がtrivial 3 例,mild 9 例,moderate 2 例であった.手術は26例(92.8%)がパッチ閉鎖術,2 例(7.2%)が直接閉鎖術で,合併手術はTAP 1 例,TVP 1 例,Maze手術 2 例(右房Maze 1 例,Cox 1 例),CABG 1 例であった.平均経過期間は48.3 ± 24.0カ月で,外来にて心電図・エコーを施行した.再手術・手術死亡はなく,経過期間中の死亡もなかった.50歳以上・未満で比較し,収縮期PAP(42.0 ± 15.2mmHg:26.7 ± 5.5mmHg,p < 0.01)は有意に高齢で高かった.術後(退院時)不整脈はAfが多く 5 例(17.9%)で,1 例は術後約 1 カ月で洞停止にてpacemaker植込み術を施行した.どちらも術前から不整脈を合併している症例であった.経過期間中にAfへ移行した症例を 1 例認めた.右房Mazeを施行した症例はAfのまま,Coxを施行した症例は洞調律となった.退院時不整脈がある症例とない症例を比較し,平均手術時年齢(67.3 ± 7.3歳:53.4 ± 14.0歳,p < 0.05)・収縮期肺動脈圧(52.7 ± 20.8mmHg:35.1 ± 12.3mmHg,p < 0.05)が有意に高かった.術後弁逆流に関しては経過期間中に悪化した症例は三尖弁で 3 例あり,1 例はCOPD・C型肝炎合併例であった.僧帽弁では 5 例で,術前よりprolapseのある症例が 4 例であった.脳梗塞が 2 例(7.2%)みられ,2 例とも心房細動合併例であった.【結論】成人期における心房中隔欠損閉鎖術は安全な手術であるが,長期罹患にて肺動脈圧の上昇や不整脈発症が高く,また弁逆流や不整脈による合併症を併発する可能性があるため外来での経過観察が必要である.

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