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成人先天性心疾患患者の健康関連QOLと心理的特性—SF36と面接調査より—
千葉県循環器病センター成人先天性心疾患診療部・小児科1),千葉大学看護学部2),教育学部3),東洋大学文学部教育学科4)
白井丈晶1),水野芳子1),椎名由美1),脇坂裕子1),豊田智彦1),立野 滋1),川副泰隆1),丹羽公一郎1,2),小川純子2),中澤 潤3),榎本淳子4)

【目的】本邦における成人先天性心疾患(以下ACHD)患者の健康関連QOLと面接調査で得られた心理的問題の関連性を明らかにする.【対象と方法】18歳以上の成人先天性心疾患患者を対象に,日本語版SF-36の自己記入と疾患に関連する体験についての半構成面接を行った.対象は33例(男性19例,女性14例).平均年齢30.4歳(18~59歳).疾患の内訳は,非チアノーゼ性17例,チアノーゼ性16例であった.既婚者は 8 人でうち 7 人が30歳以上であった.就労については常勤職が17人,非常勤職が 5 人,学生 6 人,主婦 2 人,不明 1 人であった.精神発達遅滞や染色体異常を有する患者は除外した.【結果】日本語版SF-36:下位尺度GH(全体的健康観)が標準値に対し,有意に低かった(p < .05)が,他の下位尺度およびサマリースコアー(身体的健康度:PCS,精神的健康度:MCS)では有意差は認めなかった.30歳以上の群は,未満の群に比べPCSが有意に低く(p < .01),MCSは差がなかった.また,30歳以上の群では,未婚者が既婚者に比べ,MCSが低く(p < .05).職業では全年齢で主婦のMCSが有意に高かった.面接調査:「不整脈」や「突然死」「将来」などを心配していた.学校選択には,疾患はほとんど影響していなかったが,仕事の選択は,15人が影響したと回答した.学校時代のいじめなど,「仲間・社会からの疎外感」を『つらかったこと』と回答した患者が15人と最も多く,次いで「制限による挫折感」が続いたが,それぞれの群間でのQOLに有意差はなかった.【結論】先天性心疾患患者は,就学時に集団活動の制限を受けることが,つらい体験となるが,就職・結婚に際し自分に適した選択をすることで,安定したQOLを保っている.30歳以降は,配偶者などの理解者を得ることが精神的なQOLを高めることにつながることが示唆された.

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