II-P-114
小児期における動脈硬化性病変のリスク
浜松医科大学小児科
岩島 覚,石川貴充,大関武彦

【背景】動脈硬化性病変の検出にはさまざまな指標が提唱されているが,小児期においては成長発達の影響を受ける.【目的】超音波検査にて簡便で成長発達の影響を受けにくい動脈硬化性病変検出の指標を検討する.【対象,方法】2007年 7 月~2009年 1 月に浜松医科大学小児科に入院または外来受診した118例.本研究において動脈硬化判定は血圧, intima media thickness(IMT),beta index(Beta = ln(Ps-Pd)/([Ds-Dd]/Dd), Carotid Artery Compliance(CAC = = ([Ds-Dd]/Dd)/(Ps-Pd)), Young’s Elastic Modulus(YEM = ([Ps-Pd]_Dd)/([Ds-Dd]/IMT)(Ps = systolic pressure, Pd = diastolic pressure, Ds = systolic diameter, Dd = diastolic dimameter)を指標とした.IMTは自動計測(Philips HD 11, QLAB system).正常群(N群 = 76)において計測項目を年齢,体格との相関を検討した.さらに動脈硬化リスク群(R群 = 42)についてN群との比較検討を行った.N群は器質的心疾患を認めず体脂肪率25%未満の症例.R群は心疾患術後例,川崎病冠動脈病変例,家族性高コレステロール症例とした.統計学的処理はStat-View5.0を用いp < 0.05を有意差ありとした.【結果】N群における検討にIMTのみ年齢,体格と相関関係を認めなかった.N群とR群(N vs R)の比較において,血圧(101/ 63 vs 112/66,p < 0.01),IMT(0.444 vs 0.477,p < 0.01),beta index(1.88 vs 2.01,p < 0.01),CAC(0.72 vs 0.54,p < 0.01),YEM(365.3 vs 431.1,p < 0.01)はいずれも有意差を認めた.【考察】YEMの増加とCACの減少は早期動脈硬化性病変の検出に有用とされるが,年齢,体格に影響される可能性がある.IMTの計測は簡便であり,成人領域では広く行われている.【結論】小児期においても動脈硬化のリスクを認める症例において経時的なIMT計測が必要であり,今後は早期治療介入について検討することが重要である.

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