II-P-115
肥満小児におけるBNPの検討
新潟大学大学院医歯学総合研究科小児科学分野
羽二生尚訓,鈴木 博,長谷川聡,沼野藤人,菊池 透,内山 聖

【背景】脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)はさまざまな抗心不全作用を持つホルモンであるが,近年成人領域において肥満の場合BNPが低下することが報告された.それが将来的な心血管病変の発生につながる可能性を指摘する報告もあり,その意義や影響は現在も検討されている.しかし小児領域において肥満とBNPについて検討した報告はほとんどみられない.【目的】肥満小児および正常体格児のBNPを測定し比較検討すること.肥満小児においてBNPと循環動態の指標および肥満関連因子との関連を明らかにすること.【対象】2006年と2007年に新潟県内で施行された学校健診において,中等度以上の肥満(肥満度30%以上)と定義された 6 歳から15歳までの児童236人および正常体格児40人の計276人.【方法】身長,体重,血圧,脈拍,BNPを測定した.また肥満小児に対して肥満関連因子として血糖,インスリン,HbA1c,TG,レプチン,アディポネクチンを測定し,腹部エコーで腹部皮下脂肪厚と腹部内臓脂肪厚を計測した.BNPは分布を正規化するため,対数変換し各因子との関連を検討した.【結果】平均BNP(pg/ml)は,正常体格児13.47 ± 7.94,肥満小児9.96 ± 8.45で,肥満小児は正常体格児に比べBNPが有意に低下していた(p < 0.05).Log BNPは肥満度,収縮期血圧,脈拍と有意な負の相関がみられた.また肥満関連因子とはインスリン,レプチンと正の相関が認められた.さらに腹部内臓脂肪との間に有意な負の相関が認められた.【考案】小児においても肥満ではBNPの低下があった.循環指標および肥満関連因子との相関,特に腹部内臓脂肪とBNPの負の相関を考慮すると,肥満により小児期からBNPの低下が続けば,将来的にメタボリックシンドロームや心血管病変の一因となる可能性があると考えられた.

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