II-P-116
自動体外式除細動器のホームユースに関する実態調査
金沢大学医薬保健研究域小児科1),君津中央病院救命救急センター救急・集中治療科2),大阪医科大学総合診断・治療学講座救急医学3),兵庫医科大学救急・災害医学4)
太田邦雄1),清水直樹2),新田雅彦3),丸川征四郎4)

【背景】学校心臓検診によってQT延長症候群(LQTS)と診断された児童,生徒は,ある日突然,「突然死の可能性」を宣告される.多くの場合は無症状のうちに診断されており,埋め込み型除細動器の適応外とされるが,経過中の心事故の可能性は当然ゼロではない(日本小児循環器学会報告)し,家族の不安が強いような例では自動体外式除細動器(AED)のホームユースが一部で選択されてきた.しかしながらその実態は不明である.【目的と方法】AEDのホームユースの実態を明らかにし,治療として位置づけるための具体的行動計画を策定すること.日本小児循環器学会評議員288名に対する記名アンケートによる実態調査.【結果】120名から回答を得た(回収率42%)AEDのホームユース例は13都道府県15施設22名(導入予定 1 施設 2 名を含む)であった.対象疾患はLQTSが最も多く,特発生心室頻拍,完全房室ブロックなどであった.蘇生例 1 例を除きほとんどが埋め込み型除細動器の適応外と考えられていた.全例抗不整脈(ベータ遮断薬,Naチャネル抑制剤,アミオダロン,Ca拮抗薬)を内服していた.AEDは学校が購入した 1 例を除き,レンタルされていた.全例何らかの講習を受けていたが,主治医からの指導が最も多かった.実際の使用例はなかった.【考察】無症状で抽出されたLQTSも経過中に心事故を発症することがあること,若年の心室細動発生例は学校管理外の発症も多いことから,AEDのホームユースが突然死予防に有効である可能性がある.アンケートでは実際に使用した例はなかったが,家族の不安軽減に寄与していた.全例講習を受けていた.一部で在籍している学校が費用を負担していたが,経済的負担も見逃せないと思われた.AEDのホームユースを突然死予防策として位置づけるため,(1)学校心臓検診と連動した前方視的研究による効果検証,(2)AEDのホームユースの適応および家族への指導ガイドラインの作成,ならびに(3)保険診療化が望まれた.

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