II-P-117
根拠に基づく未熟児動脈管開存症に対する外科治療—未熟児動脈管開存症診療ガイドラインから(第 3 報)—
未熟児動脈管開存症診療ガイドライン作成プロジェクトチーム
増本健一,豊島勝昭,増谷 聡,南 宏尚,山川 勝,与田仁志,赤澤陽平,横山岳彦

【目的】根拠に基づく未熟児動脈管開存症(pPDA)に対する外科治療を明らかにする.【方法】66名のpPDAガイドライン作成チームにより,世界初のpPDAの根拠に基づく診療ガイドラインを作成した.2,322論文から質の高い臨床研究114論文をEBM手法により根拠をまとめ,推奨を導き出した.研究のデザインと質から,根拠の強さに応じてA,B,Cの三つの推奨グレードで表した.外科治療に関する推奨をグレードとともに報告する.【外科治療の基準(臨床症状,検査所見)に関する推奨】2 件の観察研究からの推奨.〈呼吸循環,栄養状態,腎機能,胸部X線およびエコー所見等を指標とし,施設ごとの外科治療の経験・問題点を考慮し手術適応の決定を奨める(C)〉〈pPDAによる心不全があり壊死性腸炎や腎不全を合併した状況では,施設ごとの外科治療にかかわる総合的リスクを考慮したうえで,迅速に手術決定することを奨める(C)〉【手術施設に関する推奨】外科治療が困難な施設では搬送のリスクを考慮しpPDAの治療法が選択されるが,自施設に加え搬送施設での予後は治療法の判断に重要な情報となる.手術施設選択に関する質の高い臨床研究はなく,周産期母子医療センターネットワークのデータベースを用いたJ-PreP独自の観察研究からの推奨.〈pPDAの外科的治療において手術件数が多い施設での治療を行うことが望ましい(C)〉【インドメタシン抵抗性の晩期pPDAに関する推奨】1 件のRCTのみからの推奨.〈肺・体血流量および心不全の重症度を評価し,呼吸障害,心不全,乏尿等の症状を認めない場合は慎重な経過観察を奨める.症状を認め,インドメタシン使用により副作用を生じる場合は速やかに外科手術を決定することを奨める(C)〉【考察】外科治療における科学的根拠は少なく,EBM 手法での推奨の作成は困難であった.施設間の差,搬送のリスク等診療背景の違いが影響し治療の標準化は難しいが,当ガイドラインを叩き台として小児科医・外科医がともに考えていくことを望む.

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