II-P-119
出生直後に心筋虚血による心原性ショックを来した 1 例
国立病院機構佐賀病院小児科1),佐賀大学医学部小児科2)
漢 伸彦1),浜崎雄平2)

【はじめに】心奇形,冠動脈起始異常のない新生児の心原性ショックはまれであり報告する.【症例】日例 0,女児.在胎40週に自然分娩にて出生.出生時に一度啼泣したが,直後にショック状態となり当院へ新生児搬送された.NICU入院時(生後約30分)は,心拍50/分,全身蒼白,筋緊張低下あり.SpO2は60%程度,血圧は測定できなかった.直ちに心マッサージ,気管内挿管,急速輸液を施行し,心拍は回復したが,心音は奔馬調であった.気管内挿管時は肺出血も認めた.血液検査ではトロポニンT陽性,心電図ではV4-6のST-Tの低下と陰性T波あり.心超音波検査では左室後壁運動の著明な低下と僧帽弁逆流あり.先天奇形,冠動脈起始部異常はなかった.心筋虚血による急性循環不全と考えてカテコラミンおよびPDE阻害剤を開始した.またHct 70%と多血症もあり部分交換輸血を行った.治療開始後収縮期血圧は50mmHgへ改善し,SpO2も100%,排尿もみられた.1 生日には心超音波検査では心収縮力は正常化して僧帽弁逆流も軽度となり,心電図でもV5-6のST低下はなく,T波は陽性化した.生後 3 カ月の現在は心超音波検査では心収縮良好で僧帽弁の逆流もない.心電図所見もST低下なく,正常所見である.発達も問題なし.【結語】心原性ショックの原因として新生児仮死,多血症による冠動脈の血流障害が疑われたが,周産期の病歴,回復後経過からはショックを起こすほどの仮死,多血症があったとは考えにくい.心筋症,心筋炎も経過より否定的であり原因は不明であった.

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