【背景】ファロー四徴（TOF）術後の予後は先天性心疾患術後の中では良好な部類であり，経過良好な患者では妊娠も可能となってきている．しかしTOF患者にはさまざまな合併奇形が存在し，実際に妊娠出産を迎える段階において判断に迷うことも少なくない．【目的】当科で経験したTOFおよびTOF類縁疾患術後の妊娠出産を行った患者の経過を検討し，妊娠出産におけるリスクなどを評価する．【対象】TOFおよびTOF類縁疾患術後で妊娠・出産を行った 3 例．【症例 1】27歳，TOF po PS slight PR slight．妊娠前：NYHA I．CTR 62％．2DE RVDd = 27.5mm，LVDd = 42.2mm，LVEF = 66％．HANP 21，BNP 61.2．妊娠経過：軽度の浮腫は認めるものの，順調に経過．41w3d帝王切開にて出産（骨盤位）．3,205g，Apgar 9/9．【症例 2】22歳，TOF PA PDA po lt PA occulusion PR moderate．妊娠前：NYHA I．CTR61％．2DE RVDd = 41.4mm，LVDd = 38.5mm，LVEF = 66％，TR trivial，PR moderate．HANP 17，BNP 16.6．妊娠経過：妊娠後右室容量負荷増加傾向あり，妊娠中期より利尿剤内服．34wより切迫早産のため入院．35w4d帝王切開にて出産．2,237g， Apgar 9/9．【症例 3】23歳，TOF PV absence po PR moderate bilateral PS moderate TR slight．妊娠前NYHA I．CTR 58％．CPX peak VO₂ 19.5．2DE RVDd = 35.8mm，LVDd = 42.9mm，LVEF = 68％，TR slight peak v = 4.5m/s，PR moderate，bilateral PS．HANP 20，BNP 92.5．妊娠経過：妊娠経過中は特に問題なし．里帰り分娩可能とした．【考察】今回の 3 例はいずれも大きな合併症を来すことなく，順調に妊娠出産を行えた．2DE中心のフォローであったが，右心不全の明らかな増悪は認めなかった．【結語】成人先天性心疾患患者は増加しており，妊娠出産の適応範囲は増大傾向にある．今後さらなる症例経験の蓄積が必要である．