II-P-122
シルデナフィル(レバチオ)使用後に脳内出血を来した乳児肺動静脈瘻の 1 例
自治医科大学とちぎ子ども医療センター小児科1),小児・先天性心臓血管外科2),小児手術・集中治療部3)
佐間田一則1),白石裕比湖1),森本康子1),河田政明2),竹内 護3),桃井真里子1)

【背景】近年,シルデナフィルは,肺動脈性肺高血圧症,肺動静脈瘻において,有効性が報告されているが,乳児の脳内出血の報告はない.【症例】11カ月の女児.胎児心エコー図で,多脾症と診断され,出生後,内臓錯位,単心房,房室中隔欠損,門脈欠損と診断し,利尿剤で治療を開始した.生後 6 カ月時に心カテ検査で肺動静脈瘻が確認された.心内修復術を施行後も,低酸素血症が続くため,ベラプロストおよびボセンタンで加療した.生後 7 カ月時に洞不全症候群のため,ペースメーカー埋込術を行った.生後 8 カ月時に低酸素血症が続くため,2 回目の心カテ検査を行い,び漫性の肺動静脈瘻を確認したが,手術適応はなかった.今回,生後11カ月にSpO2が,100%酸素吸入で51%まで低下したため,PICUに緊急入院した.2 病日から,人工呼吸器管理下に,経鼻十二指腸チューブを用いて,シルデナフィルの投与を開始(体重5.1kg.1 日 2mg/分 3)した.シルデナフィルは,有効だったが,効果持続時間が短かったため,投与回数と投与量を順次増量(4 病日 6mg/分 3,12病日12mg/分 3,13病日24 mg/分 6)した.シルデナフィルが,有効(SpO2 67%から83%に上昇)であったため,ベラプロストおよびボセンタンを中止し,人工呼吸器から離脱できた.入院13病日に不機嫌になり,15病日に突然全身間代性のけいれんが出現した.頭部CT検査で,脳内出血を確認した.シルデナフィルが,酸素化維持に不可欠であったため,18mg/分 6 に減量後継続した.その後,再出血はなく,51病日に退院した.【考察】シルデナフィルを使用した成人での脳内出血の報告は散見するが,乳児の報告はない.今回,シルデナフィルの急な増量が,脳内出血を引き起こした可能性が示唆された.シルデナフィルによる血管拡張,血小板機能の抑制が誘因と考えられた.【結語】シルデナフィルは,乳児の肺動静脈瘻の治療に有効であったが,その増量は慎重に行う必要がある.

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