II-P-123
Scimitar症候群の乳児に対するmultidisciplinary approach
岩手医科大学附属循環器医療センター小児科1),心臓血管外科2),麻酔科3),放射線科4),北上済生会病院小児科5)
佐藤陽子1),高橋 信1),小山耕太郎1),小泉淳一2),猪飼秋夫2),小林隆史3),門崎 衛3),田中良一4),吉岡邦浩4),広瀬 敦4),村上洋一5)

【背景】Scimitar症候群の臨床像は発症時期により異なる.乳児期に発症するScimitar症候群は部分肺静脈還流異常症(PAPVC)に,肺低形成,肺分画症,異常体動脈,気管支病変等を合併することが多く,いろいろな専門分野からなるチームが包括的,計画的に診断と治療を行うことが重要である.乳児期に心不全と呼吸不全を呈したScimitar症候群の 1 例を報告する.【症例】生後 2 カ月,体重2,858gの女児.在胎40週,体重2,440gで出生した.生直後にチアノーゼに気づかれ,前医で胸部X線と心エコーからScimitar症候群が疑われていた.入院時,多呼吸,陥没呼吸,喘鳴がみられ,次第に心不全と呼吸不全が増強した.MRI,CT,気管支ファイバーにより,PAPVC,ASD,VSD,肺分画症,大動脈から分岐する大きな異常血管,気管支軟化症と診断した.MRIによりPAPVCと異常体動脈の全体像を評価した後,320列マルチスライスCTにより塞栓術の標的血管と気管支病変を同定した.異常体動脈に対するコイル塞栓術により,大動脈拡張期圧は上昇し,尿量は増加して,循環動態は改善した.しかし,高肺血流と気道狭窄,呼吸不全が続くため,4 日後に自己心膜による右肺静脈のreroutingとASD,VSD閉鎖術,気管支軟化症に対する大動脈吊り上げ術を行って良好な結果を得た.【考察】肺分画症に伴う異常体動脈へのコイル塞栓術は循環動態を改善し,有効であった.侵襲の少ない検査・治療から始めたことが良好な結果につながったと考える.空間分解能でMRIに勝る320列マルチスライスCT は塞栓術の治療計画を立てるうえで有用であった.しかし,とくにカテーテル治療が予想される場合の診断には,できるだけMRIを用いて,被ばくの低減を図る必要がある.

閉じる