II-P-126
Epoprostenol使用中に甲状腺機能亢進症を合併した原発性肺高血圧症の 2 例
横浜市立大学附属病院小児循環器科
山口和子,市川泰広,渡辺重朗,西澤 崇,岩本眞理

【背景】原発性肺高血圧症(以下PPH)に対するepoprostenol(以下PGI2)持続静注療法は1999年に本邦でも認可され,PPHの長期予後は大きく改善した.PGI2使用中に甲状腺機能亢進症を合併した 2 症例を経験したので報告する.【症例と経過】症例 1:16歳女児.10歳時走行中に 3 回失神を認め,PPHと診断.初診時NIHA II?a.心臓カテーテル検査で,肺動脈圧80/50(61)mmHg,大動脈圧90/55(67),Rp 15.7単位,BNP 13.9,甲状腺機能は正常だった.PGI2 2ng/kg/minより開始.その後 3 回の増悪を認め,PGI2 28ng/kg/minまで増量し,sildenafil,bosentanを導入した.3 年後,心不全悪化し,BNP 852と増加を認めた.入院中眼球突出,甲状腺機能亢進認めチアマゾール開始.輸血,DOA,HANP,バソプレッシンを使用し,PGI2 29ng/kg/minへ増量し軽快した.7 年経過後もチアマゾール内服中.NIHA III?a車椅子で通院中である.症例 2:22歳女性.13歳時学校検診を契機に診断.初診時NIHAI?a.肺動脈圧100/60(76)mmHg,大動脈圧120/65(88),Rp 32単位,BNP 22.6,甲状腺機能は正常であった.PGI2 5ng/kg/min開始,21ng/kg/minまで増量した.4 年後,吐血,肺高血圧クリーゼ,心不全悪化で入院,BNP 802と増加,甲状腺機能亢進ありチアマゾール開始した.DOA,HANP投与,PGI2 27ng/kg/minへ増量し軽快した.甲状腺機能は改善し,チアマゾールは半年後より減量中止した.9 年経過.心不全や甲状腺機能悪化なく通院中.事務職として週 5 日勤務中である.【結語】PPHに対しPGI2 使用中,甲状腺機能亢進症に伴いPHが増悪した 2 例を経験した.PGI2使用例の 4%に甲状腺機能亢進症を合併するとされ,心不全増悪因子となる.PGI2使用中は定期的に甲状腺機能のチェックが必要である.

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