II-P-127
特発性肺動脈性肺高血圧に対する心臓カテーテル検査の安全性の検討
東邦大学医療センター大森病院小児科
松裏裕行,中山智孝,直井和之,池原 聡,嶋田博光,高月晋一,佐地 勉

【目的】肺動脈性高血圧に対する心臓カテーテル検査(心カテ)は時に重大な合併症を来し得ることが全国調査などで報告されている.そこで当科における合併症の頻度と予防方法を検討することを目的に今回の研究を行った.【対象と方法】対象は2004年 1 月~2008年12月に特発肺動脈性肺高血圧(男性73例,女性80例:検査時平均年齢15.2 ± 7.0歳;6 歳以下15例)に対し施行した心カテ連続153回(同時期に施行した心カテの38.0%)である.加療中の薬剤は心カテ当日も投与し,100%酸素吸入前後と追加予定である肺血管拡張薬負荷後の心血行動態指標を求めた.「予定外に何らかの処置を必要とした心カテに起因する事象」を合併症と定義し,合併症の有無とその内容,転帰,シース挿入部位,負荷試験の内容,血行動態指標などを診療記録から後方視的に検討した.【結果】130例85%は肘正中静脈など上腕にシースを挿入して検査を施行した.肺動脈収縮期圧は87.7 ± 24.7mmHg,肺血管抵抗値17.5 ± 8.6単位,肺体血管抵抗比0.82 ± 0.27,心係数は3.5 ± 0.9l/分であった.100%酸素吸入負荷は全例で行われ,加えてFlolan(1~4ng/kg/min)もしくはsildenafil負荷試験(12.25~30mg,1 回経口投与)が45回(29.4%)行われた.合併症は23例15.0%で記録され,SpO2軽度低下 8 例,肺動脈圧亢進/体血圧低下 6 例,末梢血管攣縮 6 例(カテ操作困難 2 例)などで,いずれも酸素投与などにより迅速に回復した.ペースメーカー植え込・輸血・手術・心肺蘇生を必要としたり喀血や肺高血圧クリーゼなど重篤な合併症はなかった.合併症のあった症例は心係数が低い傾向はあるものの(3.2 ± 0.9 vs 3.5 ± 0.9, p = 0.10)合併症なしの症例と比較して重症度に有意差がなかった.【結語】重症肺高血圧に対する心カテは合併症の頻度が高い.迅速な対応により短時間で回復し得るが,処置が不適切であれば重大な結果を招きかねず細心の注意が必要である.

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