II-P-128
術後残存肺動脈性肺高血圧を合併したDown症候群患者における肺血管拡張薬内服の中期成績
旭川医科大学小児科1),第一外科2),救急医学3)
真鍋博美1),杉本昌也1,3),梶野浩樹1),藤枝憲二1),赤坂伸之2),郷 一知3)

【背景】左右短絡心疾患を合併したDown症候群患者は肺血流の増加による肺動脈閉塞性病変が進行しやすく適切な時期に手術をしても肺動脈性肺高血圧(PAH)が残存することがある.【目的】術後残存PAHを合併したDown症候群患者における肺血管拡張薬(bosentan,sildenafil)内服の中期成績を検討すること.【方法】対象はDown症候群患者 4 例(AVSD 3 例,ASD + PDA 1 例).全例正期産で初回手術を生後 3 カ月以内に施行されたが,心内修復術後にPAHが残存した.肺血管拡張薬内服の開始前に心臓カテーテル検査を行い,酸素,一酸化窒素,epoprostenolによる肺血管拡張試験を行った.いずれの症例も試験前はPp/Ps > 0.65,RpI > 7WU.m2であった.検査後に肺血管拡張薬の内服を開始し,その後 2 年間の経過観察の後に再評価を行い検討した.全例内服開始時の体重は10kg未満であった.【結果】4 例のうち 3 例は肺血管拡張薬内服開始前の肺血管拡張試験に対する反応を認めた.このうち 2 例はbosentanの短期効果を認め,投与から 2 年経過した後もPAHは改善したままである.しかし 1 例はbosentan開始から 1 カ月後に肺炎および左側房室弁逆流の悪化でPAHが増悪し死亡した.肺血管拡張試験に対する反応を認めなかった 1 例はbosentanの短期効果は認めなかったが内服開始から1.5年後に心臓カテーテル検査を行ったところPp/Ps = 0.55,RpI = 4.2WU.m2で肺血管拡張試験に対する反応性も認めるようになり,現在bosentanとsildenafilの内服で外来経過観察中である.【結語】10kg未満のダウン症候群患者においても術後PAHに対する肺血管拡張薬は副作用がなく安全に使用できた.肺血管拡張試験の反応性は内服薬の短期効果を示唆していたが,呼吸器感染や左側房室弁逆流の悪化により救命できない症例もあった.また肺血管拡張試験に対する反応を認めず内服薬の短期効果も認めなくても中期的にPAHが改善する例があることが判明した.

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