II-P-129
先天性心血管疾患に伴う気管・気管支軟化症
兵庫県立こども病院循環器科1),心臓血管外科2)
佐藤有美1),城戸佐知子1),田中敏克1),藤田秀樹1),富永健太1),齋木宏文1),加地倫子1),大嶋義博2)

【背景】重症先天性心疾患に対する内科的,外科的治療の進歩に伴い,その救命率は向上している一方,合併する気管・気管支軟化症の管理に難渋する症例は増加している.【目的】先天性心血管疾患が原因で気管・気管支軟化症を呈した症例の臨床背景や予後を検討すること.【対象および方法】過去 5 年間に,当院にて気管もしくは気管支軟化症と診断された症例のうち,先天性心血管疾患が原因と考えられた例について,原因となった基礎疾患・治療・予後について,後方視的に検討した.先天性気管狭窄や血管輪の症例は除外した.【結果】病態としては,以下の 3 群に分けられた.A)心内構造異常を伴う先天性心疾患で,肺動脈や大動脈,左房からの圧迫を認めた12例,B)大動脈縮窄に対する大動脈修復後の下行大動脈からの圧迫を認めた 4 例,C)下行大動脈右側走行等の走行異常をもつ大動脈からの圧迫を認めた 3 例.A)群の心内構造異常の内訳は,心室中隔欠損が 4 例,共通房室管口が 2 例,肺動脈弁欠損が 2 例,僧帽弁狭窄が 1 例であった.うち 5 例に血管吊り上げ術もしくは血管転位術を要したが,他の 7 例は心内修復術のみで改善した.B)群の大動脈修復術後の症例に関しては,1 例に大動脈吊り上げ術,1 例に気管切開を要したが,他の 2 例は成長に伴い改善した.C)群の血管の走行異常例は,2 例で大動脈吊り上げ術を,1 例に漏斗胸の修復術を要した.【考察】先天性心疾患の症例では,術前・術後ともに,大血管による気管や気管支への圧迫のリスクがあり,喘鳴や抜管困難を認める際には気道の精査が必要と考える.また,喘鳴を来す疾患の中には,C)群の血管の走行異常例のように心内構造異常や血管輪がなくても,気管・気管支軟化症を発症するものがあり,エコーによる詳細な評価や3DCTによる精査を行うことが重要である.

閉じる