II-P-131
生体部分肝移植後,epoprostenol持続静注から離脱し得た門脈肺高血圧(PPHTN)の 2 例
京都大学医学部小児科1),小児外科2),肝胆膵移植外科3)
鷄内伸二1),土井 拓1),横尾憲孝1),美馬隆宏1),馬場志郎1),岡本晋弥2),上本伸二2,3),中畑龍俊1)

PPHTNの根治的治療として肝臓移植が検討される.しかし肺血圧が高い場合には周術期死亡率が高く,epoprostenol(以下PGI2)等で積極的に治療したうえで肝移植に臨む必要がある.これまで当院では,重度のPPHTNを伴う肝疾患の患者 5 名に対し,PGI2投与で肺血圧をコントロールの後生体部分肝移植を施行した.そのうち 2 名については,移植術後PGI2からの離脱に成功した.症例 1 は移植術時20歳の女性.胆道閉鎖に対し,生後58日に肝門部空腸吻合術を施行されたが胆汁排泄不良あり,肝門部ボーリング術,摘脾,腸瘻造設,食道静脈瘤に対する硬化術等繰り返している.しかし徐々に黄疸,副脾増大,汎血球減少進行,全身倦怠も強くなり,19歳時に前医で生体部分肝移植に臨んだ.しかし術中著明な肺血圧の上昇に気づかれ移植術は中止.PGI2持続静注療法による加療後改めて移植術に臨む方針となった.ご家族ご本人の希望により,当院でPGI2の調整,酸素吸入の併用を行い,肝移植を施行.術後半年の時点で,CVカテーテル感染を機に前医でPGI2を終了した.症例 2 は門脈体循環シャントにより肺高血圧を来した 7 歳男児.3 歳時,門脈下大静脈シャントが原因の肝肺症候群に対し,シャント血管の結紮により肺内シャントの改善を得た.しかし,7 歳時に肺高血圧,右心不全を来した.新たな門脈体循環シャントによるPPHTNと診断.前医にて酸素投与とPGI2の先行投与施行し,肺高血圧を軽減,右心不全を改善させ,当院転院後,PGI2の調整後,生体肝移植を施行することができた.植後経過も良好で,PAHの再燃のないことを確認しつつ 1 年をかけて徐々にPGI2を減量,中止できた.これら 2 例は他の症例と比較し,PGI2への反応が良好な傾向にあり,投与開始 1 年以内で移植術に臨むことができている.肝疾患の患児においては,心エコー等で定期的にPPHTNの出現を監視し,十分な反応性のある時期に治療戦略を立てるべきと考えられる.

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