II-P-132
Down症候群の先天性心疾患術後に残存する肺高血圧に関与する因子
大阪府立母子保健総合医療センター小児循環器科1),心臓血管外科2)
濱道裕二1),石井 良1),門田 茜1),塩野展子1),前川 周1),河津由紀子1),稲村 昇1),萱谷 太1),盤井成光2),川田博昭2),岸本英文2)

【背景】肺血流増加型の先天性心疾患を合併したDown症候群では,術後の残存する肺高血圧が問題となる.【目的】Down症候群において,肺血流増加型の先天性心疾患術後の肺高血圧残存に関与する因子を検討した.【対象と方法】対象は1993年~2008年の間に,二心室心内修復術後に心臓カテーテル検査を施行したDown症候群児47人.後方視的に検討.年齢は 9 カ月~ 7 歳11カ月(中央値 2 歳 6 カ月).疾患はVSD 20,CAVC 17,PDA 3,ASD 2,DORV 2,CoA VSD 2,partial ECD 1.平均肺動脈血圧が25mmHg以上を肺高血圧残存と定義.カテーテル時の動脈血液ガスにおける二酸化炭素分圧(PCO2)が50mmHg以上を低換気と定義した.肺高血圧残存に関与する因子を単解析,次いで多重ロジスティック回帰分析で求めた.【結果】肺高血圧残存(中央値32mmHg)は16人(VSD 8/20,CAVC 5/17,PDA 3/3).統計学的には疾患別で有意差は認めなかった.単解析では肺高血圧残存に有意に関与した因子は,低換気,心内修復術(または肺動脈絞扼術)の時期,肺動脈楔入圧が 9mmHg以上,術前の平均肺動脈血圧が55mmHg以上の 4 因子.多重ロジスティック回帰分析では,肺高血圧残存に独立して関与したのは,PCO2が50mmHg以上の低換気(オッズ比99倍:p = 0.004),手術年齢が 5~10カ月時(オッズ比12倍:p = 0.048)の 2 因子のみ.術前の高度の肺高血圧は,術後の肺高血圧残存には関与しなかった.【考察と結論】術後全例に心臓カテーテル検査を施行してはいないので選択バイアスが存在する.しかし,Down症候群においては,肺血流増加型先天性心疾患の術後の肺高血圧の残存に低換気が関与していることが示唆される.また,肺高血圧の残存を来さないために,疾患に関係なく 4 カ月時までに手術介入をしたほうがよいかもしれない.

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