II-P-133
Transient abnormal myelopoiesisとpulmonary hypertensionの関連性についての検討
九州厚生年金病院小児科
原 卓也,大野拓郎,弓削哲二,倉岡彩子,熊本愛子,熊本 崇,上田 誠,渡辺まみ江,城尾邦隆

【背景】Transient abnormal myelopoiesis(TAM)は一過性芽球増殖を来す類白血病疾患でありtrisomy 21(DS)の約10%に合併する.多くは無治療で自然軽快するが,重症例では異常細胞浸潤により肝線維症や多臓器不全を発症し死に至る場合もある.また呼吸不全やpulmonary hypertension(PH)を来すといわれているが報告例は少ない.【目的】TAMとPHの関連性について検討する.【対象・方法】1997年 1 月~2008年12月に当院で入院管理を行ったDS 118例のうちTAMを合併した症例は10例(8.5%)であった.そのうちフォローアップが可能であった 9 例の臨床像を後方視的に検討した.【結果】8 例は化学療法を要さず自然に軽快,1 例が肝不全に引き続き,多臓器不全を発症し死亡した.急性巨核芽球性白血病を発症した症例はなかった.TAMが原因と考えられるPH合併例は死亡例を含む 5 例(56%)であった.またPH合併例中 4 例にCHDを認め(VSD + ASD 2 例,ASD 1 例,PDA 1 例),うち 3 例は根治術が必要であった.うち 1 例はTAM遷延中に根治術が実施されたが術後にPHが残存,TAM寛解に伴いPHも軽快した.また 1 例ではCTで間質性陰影を認め,線維化マーカーの低下に伴いPHの改善を認めた.発症様式としては,5 例中 4 例がpersistent PH of the newborn(PPHN)であった.2 例で人工呼吸管理を必要とし 1 例でNO使用を余儀なくされた.PHが遷延し最終的な改善までには平均3.6カ月を要した.一方,TAM(-)CHD(-)群にも全 8 症例中 3 例(37%)に新生児早期に多血症が原因と考えられるPH合併を認めたがPPHNでの発症はなく,全例短期間の酸素投与のみで軽快している.【考察】DSは肺血管・気道脆弱性のためPHを発症しやすいという素因を有する.TAMの病態は容易に肺血管・気道へダメージを与え重症PHを引き起こし得ることが推測される.

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