II-P-134
Fontan型手術後患者の睡眠時無呼吸症候群
兵庫県立こども病院循環器科
城戸佐知子,田中敏克,藤田秀樹,齋木宏文,富永健太,加地倫子,佐藤有美

【背景】近年,睡眠時無呼吸症候群と心不全・高血圧・突然死の関与について討論されることが多くなっている.一方,Fontan型手術後の血行動態では,無呼吸が血行動態に及ぼす影響は大きな問題となる.今回,われわれはFontan型手術後患者に睡眠時無呼吸症候群を伴った 2 症例を経験したので報告する.2 例とも繰り返す中耳炎を認めていた.【症例】症例 1:4 歳 9 カ月男児(左側相同心,単心房,共通房室弁,肺動脈狭窄)と症例 2:5 歳 1 カ月女児(房室中隔欠損,僧帽弁異常).それぞれ 2 歳 3 カ月時および 2 歳 5 カ月時にFontan型手術を施行,術後カテーテル検査での肺動脈圧はそれぞれ平均11mmHg,14mmHg,安静時SpO2は95%,98%であった.(1)症例 1:術後 1 年目頃より,睡眠時無呼吸に家族が気付き,特に感冒時にはいびきが悪化し起床時の浮腫もみられるようになっていた.睡眠時無呼吸モニターを施行したところ,夜間無呼吸回数は45回,最長無呼吸時間は 2 分10秒,夜間SpO2低下回数は71回,最低SpO2は84%であった.耳鼻科的にはアデノイド切除術の適応はないとして,在宅酸素を開始した.現在も夜間睡眠は浅く,起床時の浮腫がみられることがある.(2)症例 2:術後 1 年目頃より夜間のいびきと感冒時の浮腫がみられていたが,2 年目より夜間に嘔吐を繰り返し,起床時の浮腫が悪化した.睡眠時無呼吸モニターでは,夜間無呼吸回数は375回,最長無呼吸時間は 2 分48秒,夜間SpO2低下回数は663回,最低SpO2は42%であった.アデノイド・両側扁桃摘出術を施行し,以後嘔吐,浮腫,SpO2低下は全くみられていない.【考案】Fontan型手術後に睡眠時無呼吸症候群を伴った 2 症例を経験し,1 例についてはアデノイドに対する外科的処置が著効したが,1 例は耳鼻科的手術適応からは外れるとして経過観察のままである.耳鼻咽喉科的手術適応と,循環器科医が考える適応との間にギャップがあり,治療の選択の際に重大な検討項目になると思われた.

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