II-P-135
Activin receptor-like kinase 1 の遺伝子変異を伴う家族性肺動脈高血圧症の臨床像
東邦大学医療センター大森病院小児科1),東京女子医科大学国際統合医科学インスティテュート2)
高月晋一1),池原 聡1),嶋田博光1),中山智孝1),松裏裕行1),佐地 勉1),藤原摩耶2),八木寿人2),松岡瑠美子2)

【背景】Activin receptor-like kinase 1(ALK-1)遺伝子変異を伴うhereditary hemorrhagic telangiectasia(HHT)は鼻出血,毛細血管拡張,動静脈瘻より診断される.一方,家族性肺動脈高血圧症(fPAH)においてもALK-1遺伝子変異が報告されているが,その臨床像については十分知られていない.【目的】ALK-1遺伝子変異を有するfPAH症例における臨床像を明らかにする.【対象】遺伝子解析にてALK-1遺伝子の変異を認めたFPAH患者 5 例:発症時年齢 2~14歳,男女比 2:3.【方法】家族歴,臨床症状,検査所見および転帰について後方視的に検討した.【結果】家族内のPAH症例は兄弟が 4 例,父が 1 例であり,うち 2 例が死亡しており,またcarrierは父が 2 例,兄弟が 1 例,2 例は検査未施行のため不明であった.発症時の症状は失神 2 例,喀血 1 例,検診の異常検査値 2 例であった.頻回の鼻出血は 3 例,喀血は 3 例に認めた.初診時ではNYHA class 1:2 例,class 2:2 例,3:1 例,BNP値は431(5~1,490)pg/ml,平均PA圧は59(51~81)mmHg,PVRは19.3(7.7~39.5)単位,CIは3.6(1.8~5.2)l/min/m2であった.経過観察期間は 2~10年であり,全例でPGI2持続静注療法を施行されている.治療経過中では平均PA圧は66(49~90)mmHg,PVRは18.9(10~28.6)単位,CIは3.3(2.4~4.2)l/min/m2であった.生存は 3 例であり,1 例は治療奏功せず肺移植に至った.死亡は 2 例で,死因は慢性心不全の増悪であり,発症より 3 年以内であった.【結語】ALK-1遺伝子変異は,鼻出血,喀血,肺移植例や死亡例が多く,PAHにおいてリスク因子である可能性が高い.

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